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MASHの「一日」

MASH(仮設施設における猫の「一斉手術」)における1日の勤務時間について、White(2020)(https://ergovet.com/mash-clinics/)の記述から見ていきます。

 

クリニックの「一日」(Clinic Day)

The MASH clinic day includes travel, setup, and re-packing, in addition to the usual tasks related to operating a HQHVSN clinic such as performing patient exams, anesthetic procedures, and surgery. The total day length for the veterinarian and technician may be 11 hours, whereas the surgery time is only 4-5 hours. Thus, more than half the staff’s time is spent driving, setting up, and re-packing the surgery area. This time budget may be improved somewhat by changing clinic policies: driving time may be reduced by restricting the travel radius, and setup and takedown time may be reduced if the clinic is located in the same venue for multiple days.  

MASHの一日には、患者の診察、麻酔処置、手術などHQHVSNクリニックの運営に関わる通常の業務に加え、移動、設営、梱包が含まれます。獣医師と看護師の1日の拘束時間の合計が11時間であるのに対し、手術時間はわずか4〜5時間です。そのため、スタッフの時間の半分以上は運転、設営、梱包に費やされています。この勤務時間配分は、クリニックの方針を変えることで多少改善されるかもしれません。移動範囲を限定することで運転時間を短縮し、同じ会場に複数日滞在することで設営・撤収時間を短縮できるかもしれません。

 

【のらぬこの一言】

この時間配分を、固定式のスペイクリニックと比較してみましょう。ASPCA(米国動物虐待防止協会)の資料によると、1日35頭(犬および猫)の避妊去勢手術を行う固定式のスペイクリニックの一般的な獣医師の拘束時間は7:30~17:00といわれていて、拘束時間は約9時間30分です。そのうち手術時間は、当日退院の場合9:00~15:00で、昼休みを除くと正味の手術時間は約5時間です。残りの時間は何をしているかというと、朝は術前検査、夕方は回復時に何かあった時のための待機時間です。

ですので、MASHの「4~5時間」の手術時間はさほど短いとは思いません。またMASHは会場設営に時間がかかるといいますが、MASHチーム到着前に受入団体が患者を受け入れておけば、看護師が積み荷を降ろしている間に獣医師が術前検査に従事することができます。回復時の待機時間も、撤収のための梱包時間に充てることができますから、意外に無駄な時間は少ないと思います。拠点からの出発時の積荷作業や、会場までの移動時間だけはどうにもなりませんが…。MASHチームが現地に宿泊し、同じ会場で数日間MASHを行うような日程にすれば、楽な日程で手術時間も延長することができるかもしれません。