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結び・MASHの可能性

White(2020)(https://ergovet.com/mash-clinics/)による、MASH(仮設施設における猫の「一斉手術」)についての記事の最後は、このような文章で締めくくられています。

 

MASH clinics provide a flexible, low-cost, high-quality method for delivering spay-neuter services. The MASH clinic’s versatility, adaptability, relatively low capital investment, and short time to start up are the particular strengths of this clinic type, and makes these clinics useful both as short-term solutions as well as long-term, sustainable HQHVSN providers.

MASHクリニックは、避妊去勢手術サービスを提供するための柔軟で低コスト、高品質の方法を提供します。MASHクリニックの多様性、適応性、比較的低い設備投資、および立ち上げまでの短い時間は、このクリニックタイプの特別な強みであり、これらのクリニックは短期的な問題解決だけでなく、長期的で持続可能なHQHVSN(高品質・大量の避妊去勢手術)の提供者としても機能します。

 

ペットの遺棄、野良犬や野良猫による生活環境悪化、自治体による殺処分…動物に関わる諸問題の根源的原因の全てとは言いませんが、その大部分は犬猫の過剰繁殖に起因すると言っても過言ではないでしょう。犬猫の過剰繁殖を防止する切り札は避妊去勢手術です。犬猫用の経口避妊薬の開発も進んでいますが、その完成を待っていては手遅れになるおそれがあります。できるだけ早く蛇口を閉める必要があります。

幸いにも、日本においても都市部を中心に避妊去勢手術に特化した「スペイクリニック」が続々と誕生していますし、自動車を改造したモバイルクリニックによる避妊去勢手術サービスも始まっています。しかしそういったサービスから取り残された地域については、やはりMASHでフォローしていくしかありません。

協働型のMASHであれば、獣医師と助手の2名(獣医師1名でも何とかなりますが)の人員と、200万円+車両代ほどの初期投資で開始できます。ただし会場確保や当日の会場管理に従事するボランティアスタッフの存在が前提です。受け皿がなければMASHは成り立ちません。このことはしつこく強調しておきたいと思います。また「とりあえずやってみる」ことも重要です。地元の動物保護団体が受け皿を作り、MASHを誘致し、月に1回や2回でも一斉手術を行えば、それが既成事実となり協力者も増えていきます。これは本当の話で、あれよあれよという間に話が大きくなっていくものです。MASHが軌道に乗り手術数も増えてくれば、スペイクリニックを立ち上げようという動きも起こるかもしれません。

この記事を書いている間にも、愛媛県でMASHタイプのクリニックが開設されたとのニュースが飛び込んできました。犬猫の避妊去勢手術のさらなる普及と過剰繁殖の根絶を切に願いつつ、この連載を終えたいと思います。