TNRと「鳥獣保護法」

役所に勤めていると、いろいろなことを尋ねられます。その中には、簡単に答えられることもありますし、関係各所に照会しなければならないこともあります。また単純な話だと思っていても、よくよく調べてみれば奥が深いこともあります。

先日TNR活動をされている方から「野良猫を捕獲するために、無免許の者が捕獲器を設置することは鳥獣保護法違反だと言われた」という相談を受けまして「何をバカな」と思ったのですが、実は一概に「それはウソ」とは言い切れない、奥深い事項でもあります。野良猫の無許可捕獲が違法となるケースについて検証し、皆様に安心してTNR活動を実施していただくため、「鳥獣保護法」をひも解いてみたいと思います。そしてそこからあぶりだされる、いわゆる「ノネコ」の問題についても考えてみたいと思います。


野良猫の捕獲の法的規制について、結論から言うと、

 

・人里で生活し、生活の一部を人間社会に依存しているような、いわゆる「ノラネコ」の捕獲を規制する法律はありません。しかし捕獲の方法などによっては「虐待」とみなされ、動物愛護法に抵触する可能性があります。

 

・山野で生活し、一切人間に依存せず生活している「ノネコ」については「鳥獣」(野生動物)に該当するため、その捕獲は「鳥獣保護法」の規制を受けます。


どうしてそういうことになるのか、じっくりと説明していきたいと思います。

 

「鳥獣保護法」とは

ここでは普通に「鳥獣保護法」と言っていますが、正式名称は「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」といいます。環境省は「鳥獣保護管理法」と略していますし、狩猟者団体は「鳥獣法」と略します。この法律はかつて「鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律」という名称で、略称は「狩猟法」でした。


この法律の目的が第1条に書かれています。

 

この法律は、鳥獣の保護及び管理を図るための事業を実施するとともに、猟具の使用に係る危険を予防することにより、鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保(生態系の保護を含む。以下同じ。)、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする。

 

つまり「自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資する」ことがこの法律の目的で、そのためには「生物の多様性の確保」や「生活環境の保全」、「農林水産業の健全な発展」が必要で、その手段として「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化」を図るためのルールを定めているわけです。