悩ましい「ノネコ」の扱い

前述のとおり、野生動物としての「ノネコ」は「鳥獣保護法」で「狩猟鳥獣」に指定されているため、その捕獲は狩猟によるか、環境大臣または都道府県知事の許可を得て捕獲しなければなりません。

 

「ノネコ」の捕獲事業

生態系の保護を目的とした「ノネコ」の捕獲は、国や都道府県が実施主体として行われていますが、それらは主に島嶼部において実施されています。つまり、

 

・もともと大型捕食動物が存在しなかったが「ノネコ」が侵入したことにより在来生物が捕食され生態系がかく乱されている地域…沖縄本島、奄美諸島、小笠原諸島など

・海鳥の繁殖地に「ノネコ」が侵入し、海鳥の繁殖に影響を及ぼしている地域…天売島など

・もともとネコ科の野生動物が生息していて、「ノネコ」の侵入により在来種の生息が脅かされている地域…西表島、対馬

 

捕獲した「ノネコ」の処遇

そこで問題になるのが、捕獲された「ノネコ」の処遇です。「ノネコ」の処遇については、理論上次の4つが考えられます。

 

・希望者への譲渡

・殺処分

・避妊去勢手術を行いリターンする(TNR)

・移住

 

日本において、捕獲した「ノネコ」はできる限り譲渡先を探し、譲渡できない個体については殺処分ということになっています。しかしそれは殺処分が前提で、批判をかわすために「譲渡を試みた」体にしているにすぎません。なぜそう言えるかというと、「ノネコ」を家庭動物として飼育するには一定の馴化が必要ですが、国や自治体は「ノネコ」を馴化して譲渡しているわけではなく「ノネコは飼うのが難しいけれど、それでもいいという人にはお譲りします」もしくは「馴化して譲渡してくれる団体にお譲りします」というスタンスです。要するに丸投げです。某自治体による「野犬」の「垂れ流し譲渡」に通じるものがありますが、目先の殺処分数を減らすために無責任に丸投げするという姿勢はいかがなものかと思います。生態系保護の観点から「ノネコ」はTNRや移住が難しいため、譲渡できなければ殺処分しか選択肢がありません。殺処分ではなく譲渡を前提とするというのであれば、「ノネコ」の馴化のスキルを持った個人や団体に譲渡を委託するか、馴化を行う「リハビリセンター」を設けるべきではないかと私は思います。