日本において捕獲された「ノネコ」は譲渡または殺処分されていますが、「ノネコ」のTNRはできないのでしょうか。
「ノネコ」の個体数管理の考え方
海外のTNR推進団体はferal cat(日本でいうところの「ノネコ」に近い概念です)は譲渡に向かないため、保護によらずTNRで個体数を管理すべきとしています。そしてferal catにTNRを実施し給餌管理を行えば、野生生物の捕食は減るとされています。これはInternational Cat Care(ICC)もAllay Cat Allies(ACA)も同じです。ICCはTNRを実施しようとする際には周囲の生態系に配慮すべきとしていますが、ACAは「もともと猫は猫砂が発明されるまでは屋外で飼われていたのだから、すでに猫は生態系の一部である」というのが持論です。そして野生動物の個体数が減少しているのは人間による開発が原因であり、feral catによる捕食のせいにすべきではないとしています。
日本で「ノネコ」のTNRは可能か
日本の「鳥獣保護法」の規定では「ノネコ」の捕獲は「許可捕獲」または「狩猟」による必要があります。「鳥獣保護法」の規定に基づいて捕獲または狩猟した鳥獣の、その後の処遇についての決まりはありません。特定外来生物等でない限り、法的には「キャッチ&リリース」は可能です。しかし現実問題として「鳥獣保護法」の規定に基づく捕獲や狩猟は「環境保全」や「個体数管理」などが建前であり、または研究や鵜飼といった目的で行われており、そもそも捕えた鳥獣をリリースするという発想はありません。
私の意見としては、合法的に捕えた「ノネコ」に避妊去勢手術を施しリターンする、いわゆるTNRは法的に可能であると考えます。しかしそれは法的な問題であり、生態系への影響を考えると、「ノネコ」のTNRを安直に推奨することはできません。
「ノネコ」のTNRが推奨されない理由
「ノネコ」は、環境省と農林水産省が連名で公表している「我が国の生態系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト」(https://www.env.go.jp/nature/intro/2outline/files/gairai_panf_a4.pdf)において、ノヤギ(ヤギの野生化したもの)とともに、最高ランクの「緊急対策外来種」(対策の緊急性が高く、積極的に防除を行う必要がある)とされています※。猫はハンターとして優秀で、特に希少生物の捕食被害による生態系のかく乱が問題となります。(続く)
※「カイウサギ」、「ノイヌ」(イヌの野生化したもの)、「ノブタ」(ブタの野生化したもの)は、2番目の「重点対策外来種」(甚大な被害が予想されるため、対策の必要性が高い)とされています。