子猫の麻酔の懸念事項<その5>精神的問題

英国の猫関連団体の連合体であるThe Cat GroupのWebページ “Anaesthesia for neutering kittens”(子猫の避妊去勢のための麻酔)(http://www.thecatgroup.org.uk/anaes.html)には、幼い子猫に麻酔をかける際の懸念事項とその対策について述べられています。

 

Pain and behaviour(痛みと行動)

It is important that the kitten's experience of anaesthesia and surgery is not unpleasant, as this may be its first experience of contact with mankind. Calm but firm handling and good analgesia are essential in ensuring the process is not a nasty experience. It has long been believed that young animals do not experience pain in the same way as adults, making pain relief unnecessary. There is absolutely no evidence for this, although conduction of stimuli that are perceived as pain may take a few microseconds longer to reach the brain in a kitten than in an adult. Hence, analgesia is an essential component of the anaesthetic protocol for neutering kittens in the same way as it is required for older animals.

子猫の麻酔と手術の経験は、人間との最初の接触の可能性があるため、不快ではないことが重要です。プロセスが厄介な経験にならないようにするためには、穏やかでしっかりとした取り扱いと優れた鎮痛が不可欠です。若い動物は成獣と同じような痛みを感じないため、鎮痛の必要はないと長い間信じられてきました。痛みとして知覚される刺激の伝導が成猫よりも子猫の脳に到達するのに数マイクロ秒長くかかる可能性はありますが、その証拠はどこにもありません。したがって、鎮痛は、大人の動物に必要なのと同じ方法で子猫を避妊去勢するための麻酔手順の重要な要素です。

 

【のらぬこの一言】

幼い子猫に避妊去勢手術(つまり外科手術)を行う際の懸念事項として、麻酔事故とともに「手術によるストレス」による将来の行動への影響があげられます。人間との関係が十分に築かれていない段階の子猫に対して、人間が外科手術により「痛い思いをさせる」ことが、子猫の行動や人間との関係に悪影響を与えるのではないかという懸念です。かつては獣医領域だけではなく人医領域においても、小児は神経系が未熟なため痛みを感じない、もしくは痛みを記憶できないという通念がありました。また術後の痛みの管理についても、さほど重要視されてこなかった過去があります。もちろん現在においては、それらはすべて誤りであることが周知の事実となっています。幼い子猫であっても、手術の際には適切な鎮痛を行うことは常識となっていて、子猫の麻酔に用いられる処方についても、鎮痛効果がある薬物を組み合わせることとされています。手術時の疼痛管理は成猫であろうが子猫であろうが重要です。