子猫の麻酔の実際 その2

英国の猫関連団体の連合体であるThe Cat GroupのWebページ “Anaesthesia for neutering kittens”(子猫の避妊去勢のための麻酔)(http://www.thecatgroup.org.uk/anaes.html)には、幼い子猫の麻酔法の詳細について述べられています。

 

挿管

Anaesthesia for female kittens is best continued after tracheal intubation to protect the airway, using one of the same non-rebreathing circuits. Intubation must be gentle, as the larynx and trachea are small and delicate, and a non-cuffed tube is sufficient in order to allow the largest possible internal diameter tube to be placed. Local anaesthetic spray on the larynx will facilitate intubation, but care must be taken not to exceed 10 mg/kg lidocaine. 

気道を保護するために気管挿管後も同じ非再呼吸回路(のらぬこ注:「Tピース」や「ベイン回路」)のいずれかを使用して、メスの子猫の麻酔を継続するのが最善です。喉頭と気管は小さくデリケートであるため、挿管は穏やかに行う必要があり、可能な限り大きな内径のチューブを配置するには、カフなしのチューブで十分です。喉頭への局所麻酔スプレーは挿管を容易にしますが、リドカインが 10 mg/kg を超えないように注意する必要があります。

 

【のらぬこの一言】

The Cat Groupは一般的な飼い猫の獣医療を前提としているため、子猫の避妊手術の際にも挿管を行うとしています。後述されていますが、野良猫の避妊去勢手術の際には挿管せずマスクのみでも可としています。

 

野良猫の麻酔

In feral kittens induction of anaesthesia is probably less stressful for all concerned if induced with a volatile anaesthetic agent in oxygen ducted into an airtight chamber. Anaesthesia can then be maintained via a mask or tube as after injectable premedication. If inhalation induction is used the kitten should also be given opioid analgesics before surgery to reduce anaesthetic requirements and provide post operative analgesia.

野良の子猫では、気密チャンバーに導入された、酸素と混合した吸入麻酔薬で麻酔を導入すると、関係者全員にとっておそらくストレスが少なくなります。麻酔は、注射可能な前投薬の後と同様に、マスクまたはチューブを介して維持します。吸入誘導を使用する場合は、手術前に子猫にオピオイド鎮痛薬を投与して、麻酔の要求量を減らし、術後の鎮痛を提供する必要があります。

 

【のらぬこの一言】

実験動物の麻酔に用いる麻酔用のチャンバー(気密容器)に子猫を入れ、酸素と混和した吸入麻酔薬を注入することにより麻酔を導入することもできます。日本ではあまり見ませんが、コーネル大学の麻酔学のテキストでそんな写真を見た記憶があります。この場合、導入後に鎮痛薬を追加投与する必要があります。