「譲渡後の避妊去勢手術契約」を採用した理由

「譲渡後の避妊去勢手術契約」により動物の譲渡を実施している米国デーン郡人道協会(DCHS)のDonnett主任獣医師と、Matt動物医療サービス運用アシスタントへのASPCA(米国動物虐待防止協会)のインタビュー記事“They Did It: Decreased Length of Stay with Post-Adoption Spay/Neuter Contracts”(https://www.aspcapro.org/resource/they-did-it-decreased-length-stay-post-adoption-spayneuter-contracts)について見ています。

 

ASPCApro: Why does your shelter use post-adoption spay/neuter contracts?

ASPCApro:なぜあなたのシェルターは譲渡後の避妊去勢手術契約を使用するのですか?

 

Donnett & Matt: DCHS uses post-adoption spay/neuter contracts to decrease length of stay. Contracts are often used for animals who are too young or need more time to recover from illness before surgery. Our use of contracts increased greatly during the pandemic when we discontinued routine spay/neuter prior to adoption to conserve PPE supplies. More recently, during Clear the Shelters, all available kittens could go home that day with post-adoption contracts for spay/neuter.

Donnett&Matt:DCHSは、譲渡後の避妊去勢手術契約を使用して、滞在期間を短縮しています。契約は、若すぎる動物や、手術前に病気から回復するためにより多くの時間を必要とする動物によく使用されます。PPEの供給を節約するために、譲渡前に定期的な避妊去勢手術を中止したパンデミックの間、契約の使用は大幅に増加しました。最近では、Clear the Sheltersの期間中、譲渡可能なすべての子猫は、譲渡後の避妊去勢手術の契約でその日に家に帰ることができました。

 

【のらぬこの解説】

DCHSが譲渡後の避妊去勢手術を採用した最大の理由は、動物の滞在期間の短縮です。滞在時間を短縮することにより、収容による動物のストレスを軽減することができ、また収容スペースを有効活用することができます。一般にそれは、譲渡対象の動物に迅速に避妊去勢手術を行い譲渡することによって達成されます。しかし幼齢や疾病などの理由により迅速な手術の実施が難しい場合、手術を後回しにしてとりあえず譲渡することにより、滞在期間を短縮することができます。その代わり、譲渡後に新しい飼い主が避妊去勢手術を実施するよう、契約(contract)を結ぶのです。単なる覚書や口約束ではありません。そのあたりを抜きにして、滞在期間の短縮を口実に譲渡前避妊去勢手術を実施しないのは、単なる怠慢と言わざるを得ません。

※余談ですが、米国ではCOVID-19のパンデミックにより、PPE(マスクや手袋などの個人用防護具)などの医療用物資の調達が困難になり、避妊去勢手術の実施がままならないという事態も発生し、その際にも譲渡後の避妊去勢手術契約を活用したということです。