「譲渡後の避妊去勢手術契約」のメリット その2

「譲渡後の避妊去勢手術契約」により動物の譲渡を実施している米国デーン郡人道協会(DCHS)のDonnett主任獣医師と、Matt動物医療サービス運用アシスタントへのASPCA(米国動物虐待防止協会)のインタビュー記事“They Did It: Decreased Length of Stay with Post-Adoption Spay/Neuter Contracts”(https://www.aspcapro.org/resource/they-did-it-decreased-length-stay-post-adoption-spayneuter-contracts)から、「譲渡後の避妊去勢手術契約」のメリットについて見ています。

 

The kittens also benefitted from socialization and a low-stress environment in their new homes.

また子猫たちは、新しい家での社会化とストレスの少ない環境の恩恵を受けました。

 

【のらぬこの解説】

子猫の場合(子犬もそうなのでしょうが)、早い方が人馴れしやすいということと、免疫力が弱くシェルター内における感染症のリスクが高いことなどから、早く家庭に入れることが望ましいとされています。特に4週齢から6週齢くらいの子猫を、手術可能な6週齢までシェルターに置くべきかどうかは悩ましい問題です。子猫専用室を設置したり、預かりボランティアを活用するなどして、6週齢まで収容して避妊去勢手術後に譲渡することは可能なのでしょうが、解決策のひとつとして「譲渡後の避妊去勢手術契約」も考えられます。

 

We’ve also been able to form crucial relationships with adopters through general stewardship when scheduling surgery. This includes communicating with them about their pet, learning their animal’s new name, sharing pictures and videos, sharing any new behaviors they have learned, and hearing any concerns they may have.

また、手術を予定する際に、包括的な管理を通じて譲渡先と重要な関係を築くことができました。これには、ペットについての情報交換、動物の新しい名前を知る、写真やビデオの共有、新たに見つけた行動の共有、懸念事項の聞き取りが含まれます。

 

【のらぬこの解説】

譲渡の際に、新しい飼い主に避妊去勢手術を予約してもらうというやり方もありますが、「譲渡後の避妊去勢手術契約」が適用される動物は幼齢や病気など、手術実施のめどが立たないことが多いため、DCHSは避妊去勢手術の実施について一定の猶予期間を設けています。

一般的な譲渡契約であれば、譲渡後の動物の所有権は新しい飼い主に移りますが、「譲渡後の避妊去勢手術契約」の場合、契約内容が履行されるまでは譲渡した動物はシェルターの管理下にあるので(契約が破棄された場合、動物はシェルターに戻ることになる)、それまでの間はシェルターが動物を包括的に管理(general stewardship)することになります。