「譲渡後の避妊去勢手術契約」の確実な履行 その2

米国デーン郡人道協会(DCHS)は「譲渡後の避妊去勢手術契約」により動物の譲渡を実施していますが、譲渡後の避妊去勢手術をどのように履行させているのでしょうか。DCHSのDonnett主任獣医師と、Matt動物医療サービス運用アシスタントへのASPCA(米国動物虐待防止協会)のインタビュー記事“They Did It: Decreased Length of Stay with Post-Adoption Spay/Neuter Contracts”(https://www.aspcapro.org/resource/they-did-it-decreased-length-stay-post-adoption-spayneuter-contracts)から見ていきましょう。

 

We consider the contract completed/non-compliant if we do not hear back from the adopter after all attempts have been made and once the time frame for scheduling has elapsed. We try to space out our calls/emails, which seems to help with success in scheduling. With all these systems in place, it is rare we end up with non-compliance situations, and we see it more frequently in our service vouchers (microchip/rabies) vs. spay/neuter vouchers. Since starting the vouchers during the pandemic, we’ve had fewer than 10 non-compliant adopters.

すべての試行が実行され、期限経過後に譲渡先から返信がない場合、契約は終了/不履行と見なされます。我々は電話やメールの間隔を空けるようにしています。これは、予約設定の成功に役立つようです。これらすべてのシステムが整っているため、契約違反の状況に陥ることはめったにありません。そして、その傾向は私たちのマイクロチップや狂犬病ワクチンのクーポン券よりも、避妊去勢手術のクーポン券でより強く見られます。パンデミック中にクーポン券を開始して以来、不履行の譲渡先は10人未満でした。 

【のらぬこの解説】

2~3回の督促によっても新しい飼い主が動物の避妊去勢手術に応じない場合、または期限延長の申し出がなければ、「譲渡後の避妊去勢手術契約」は契約違反により契約終了(解除)となります。それは極力避けたいですので、DCHS は「督促の間隔を空ける」という工夫をしています。「不履行の譲渡先」がその後どうなったかを知りたいところですが、そこについては記載がありません。しかしこれはあくまでも「契約」ですから、民事手続きによりしかるべき措置が可能です。日本の自治体においても、避妊去勢手術未実施の動物を譲渡する際に、新しい飼い主に「避妊去勢手術を実施する」旨の「誓約書」にサインさせるということがしばしば行われますが、これとはちょっと違います。もちろんこの「誓約書」を盾に避妊去勢手術の実施を迫ったり、できないのであれば返還するよう促すことはできるのでしょうが、フォローする人員も足りませんし、せっかく「押し付けた」動物が戻ってくるのも面白くありませんから、「誓約書の内容を守らない人が悪いよね」で済まされているのです。