前回、シェルターに収容した犬の行動評価の重要性について述べましたが、では行動評価はどう実施すればよいのでしょうか。アニマルシェルターにおける動物の行動評価について、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters”(2010)を見てみましょう。
行動評価のタイミング
Assessment of an animal’s behavior must begin at the time of intake. Just as care is taken to note any physical problems that may require attention, behavioral problems (stress, fear, anxiety, aggression) that require intervention or affect how that animal can be safely handled should also be noted at the time of intake and entered into an animal’s record. Actions should be taken to respond promptly to behavioral needs. Ongoing assessment of each animal’s behavior should continue throughout the animal’s stay in the shelter.
動物の行動の評価は、受入時に開始する必要があります。注意を必要とする可能性のある身体的問題に注意を払うように注意を払うのと同様に、介入を必要とする、または動物を安全に取り扱う方法に影響を与える行動上の問題 (ストレス、恐怖、不安、攻撃性) も、受入時に記帳し、動物の記録に加える必要があります。行動上のニーズに迅速に対応するための措置を講じる必要があります。それぞれの動物の行動の継続的な評価は、動物がシェルターに滞在している間継続する必要があります。(P26-27)
結論から言えば、行動評価は受入時からシェルターに滞在している間ずっと行います。受入時の行動評価は身体検査の一環として行われます。受入時の行動評価の目的は身体検査と同様、①受入れ時の状態の把握 ②隔離等の緊急対応の必要性の判断 ③飼養管理上の留意事項の判断です。原則としてこの時点で譲渡適性を判断することは避けるべきですが、出自が明らかで人慣れしていて見た目健康な動物については即譲渡対象にすることもあり得ます。感染症やストレスのリスク軽減のために不必要なプロセスを省き、シェルターの滞在期間を極力短くすることはシェルターメディスンの原則だからです。
受入時の行動評価の結果に基づき、各個体に対して適切なエンリッチメント※を提供します。環境への「慣れ」やエンリッチメントへの反応なども含め、動物の行動を日々観察し記録します。その積み重ねにより、譲渡適性を判断することになります。
※エンリッチメント 正式には「環境エンリッチメント(environmental enrichment)」。動物福祉の立場から、飼育動物の「幸福な暮らし」を実現するための具体的な方策のこと。