シェルターに収容した動物を譲渡する際の行動評価の実際について、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters”(2010)から見てみましょう。
Organizations that develop their own evaluation should do so in consultation with a veterinarian or behaviorist familiar with the science and theory of behavior assessment. Staff performing evaluations must receive adequate training in performance, interpretation, and safety. A standardized behavior examination form should be used and each evaluation should be documented. Formal behavioral evaluation should not necessarily invalidate information provided by the owner or observations made during staff interactions with an animal. An overall assessment must include all of the information (history, behavior during shelter stay, and formal evaluation) gathered about the animal.
独自の評価を作成する組織は、行動評価の科学と理論に精通した獣医師または行動学者と相談して行う必要があります。評価を行うスタッフは、実行、解釈、および安全性について適切なトレーニングを受けなければなりません。標準化された行動検査フォームを使用し、各評価を記録する必要があります。正式な行動評価は、飼い主から提供された情報や動物とのスタッフのやり取り中に行われた観察を必ずしも無効にするべきではありません。総合評価には、動物に関して収集されたすべての情報 (履歴、シェルター滞在中の行動、正式な評価) が含まれていなければなりません。
犬や猫の行動評価ツールはいくつか開発されています。犬についてはASPCA(米国動物虐待防止協会)の“SAFER” (譲渡適性を判断するための安全性評価)が有名ですが、ボストン動物保護連盟の“Match-Up II”や、その他マッチングに主眼を置いたペンシルベニア大学の“C-BARQ” (犬の行動評価と研究アンケート)、ASPCAの“Canine-ality”などがあります。また猫のマッチングに主眼を置いたASPCAの“Feline-ality”というのもあります。しかし残念ながら、犬や猫の家庭動物としての挙動を完全に予想できる「絶対的」な方法は今のところありません。日本の環境省も「譲渡支援のためのガイドライン」で行動評価の方法について紹介していますが、例示しているにすぎません。動物の譲渡を行う行政機関や団体が、独自の方法で行動評価を行っているのが現状です。独自の評価基準を定める際には、上記のツールを参考にすることになるのでしょうが、専門家の助言を入れながら妥当性の高いものにしていく必要があります。ここで得られた評価が安楽殺の根拠になることもあり得るからです。