非常に臆病な犬の行動修正 その1

行動評価の結果「譲渡不適」と判定された犬の馴化について、ASPCA(米国動物虐待防止協会)の論文要旨“Behavioral Rehabilitation of Extremely Fearful Dogs”(非常に憶病な犬の行動修正)(https://www.aspcapro.org/resource/behavioral-rehabilitation-extremely-fearful-dogs)から見ていくことにしましょう。

 

Some dogs entering shelters exhibit moderate to extreme fearfulness, often after experiencing cruelty, including neglect. Dogs displaying extreme fearfulness are difficult to assess and treat using the tools and protocols available in most shelters. Without effective treatment, these dogs have an unacceptably poor quality of life and are unlikely to be successfully adopted.  

シェルターに入る一部の犬は、ネグレクトを含む虐待行為を経験した後、中度から極度の恐怖を示すことがよくあります。極度の恐怖を示す犬は、ほとんどのシェルターで利用可能なツールや手順を使用して評価および治療することは困難です。効果的な治療がなければ、これらの犬の生活の質は容認できないほど悪くなり、譲渡に成功する可能性は低くなります。

 

The ASPCA Behavioral Rehabilitation Center (BRC) developed protocols using behavior modification techniques such as desensitization, counterconditioning, and operant conditioning to reduce the fear of stimuli that pet dogs typically experience in adoptive homes. This study examined the effectiveness of those protocols.

ASPCA Behavioral Rehabilitation Center (BRC)は、脱感作、拮抗条件付け、オペラント条件付けなどの行動修正技法を使用して手順を開発し、譲渡先でペットの犬が通常経験する刺激に対する恐怖を軽減しました。この研究では、これらの手順の有効性を調べました。

 

唐突に心理学用語が出てくるので、補足説明しておきます。不適切な行動を修正するために用いられる心理療法を「行動療法」といい、「古典的条件付け」「オペラント条件付け」「観察学習」の3本柱から成ります。ただし動物は「観察学習」しませんから、前の2者がメインになります。

例えば犬が人間を恐れているということは、その犬にとって人間は自分に対して危害を加えるものであると「学習」した結果であると考えます。これを「古典的条件付け」といいます。この犬を人間に馴れさせるには、人間は危害を加える存在ではないということを上書き学習させる必要があります。そのために用いられる手法が「(系統的)脱感作」と「拮抗条件付け」です。「(系統的)脱感作」とは人間に少しずつ慣れさせて、人間が怖い存在ではないことを学習させる方法です。「拮抗条件付け」とは、人間の姿が見えたときにおやつなどのごほうびを与えて、人間の姿が見えるといいことがあると上書き学習させる方法です。両者を併用すると、効果はより高まります。

「オペラント条件付け」とは「好ましい」行動に対してごほうびを与えることにより「好ましい」行動の頻度を上げようとする方法です。例えば引きこもっている犬が人前に出てきたときにおやつをあげるようにすることで、出てくる頻度を上げようとするようなことを指します。