非常に臆病な犬の行動修正 その2

行動評価の結果「譲渡不適」と判定された犬の馴化について、ASPCA(米国動物虐待防止協会)の論文要旨“Behavioral Rehabilitation of Extremely Fearful Dogs”(非常に憶病な犬の行動修正)(https://www.aspcapro.org/resource/behavioral-rehabilitation-extremely-fearful-dogs)から見ています。

 

Study Design(研究の方法) 

The dogs in the study were from ASPCA cruelty and neglect cases, partner animal shelters, and foster-based rescue groups. All of the dogs’ fearful behavior was severe enough to prevent placement in an adoptive home and impair the dog’s ability to function comfortably as a companion animal. 

この研究に参加した犬は、ASPCA の虐待やネグレクトの症例、協力アニマルシェルター、自宅預かり型の動物保護団体の犬でした。すべての犬の恐怖行動は譲渡を妨げ、犬がコンパニオンアニマルとして快適に機能する能力を損なうほど深刻でした。

 

先ほども述べたとおり、行動評価によって「譲渡不適」と判断された犬については「馴化後に譲渡」「安楽殺」「サンクチュアリでの終生飼養」のいずれかが選択されます。この研究の対象とされた犬たちは「譲渡不適」と判断されましたが、安楽殺を避けるために行動療法による行動修正を試みたわけです。

 

BRC staff randomly assigned 441 dogs to one of two treatment groups: immediate treatment onset or delayed onset.  

BRC(ASPCA行動リハビリセンター)のスタッフは、441 匹の犬を 2 つの治療グループ(即時治療開始、遅く開始)のいずれかに無作為に割り当てました。 

 

ここでは行動療法の効果を検証するために、3日間環境に慣れさせた後に即行動療法を開始するグループと、その3週間後から行動療法を開始するグループに分けています。この研究デザインでは、行動療法が行動修正に効果があるか否かを検証していくことになります。つまり行動療法に効果があれば、即時治療開始し他グループは3週間の間に何らかの効果が出ていると推測されます。仮に両グループの犬が3週間後に全く同じ状態であった場合、行動療法には効果がなかったという結論に達しますが、これには2つの意味があります。

・行動療法そのものが無意味であった(絶対的に効果がなかった)…行動療法は「譲渡不適」と判断された犬の行動修正に効果がなかったということになります。

・行動療法に効果はあったが、特筆すべき効果ではなかった(相対的に効果がなかった)…もしかしたら、シェルターで3週間飼われているだけで、行動療法に匹敵する何らかの効果があるのかもしれません。