非常に臆病な犬の行動修正 その5

行動評価の結果「譲渡不適」と判定された犬の馴化について、ASPCA(米国動物虐待防止協会)の論文要旨“Behavioral Rehabilitation of Extremely Fearful Dogs”(非常に憶病な犬の行動修正)(https://www.aspcapro.org/resource/behavioral-rehabilitation-extremely-fearful-dogs)から見ています。

 

Study Takeaways(研究のポイント) 

Findings suggest the following: 

調査結果は次のことを示唆しています。 

 

Behavior modification protocols have the potential to rehabilitate moderately to severely fearful dogs, preventing euthanasia. 

行動修正手順は、安楽殺を防ぎ、中度から重度の恐怖症の犬の行動修正に資する可能性があります。 

 

この研究では、現時点において行動上の理由で「譲渡不適」と判断された犬であっても、学習理論に基づく行動療法を3か月程度実施すれば、約8割の犬が譲渡可能となることが示されました。

 

The treatment protocols drove behavioral improvement, as dogs in the delayed onset group did not show improvement until they started behavior modification sessions.  

治療開始が遅れたグループの犬は、行動修正セッションを開始するまで改善を示さなかったため、治療手順は行動改善を促進したと考えられます。 

 

この研究では、治療開始を3週間遅らせたグループの犬は、その間行動上の改善がみられなかったとされています。このことには2つの意味があります。つまり、

・行動療法の効果が認められた

・単に「人が世話している」というだけでは行動は変容しない

 

Well-resourced shelters may find this protocol beneficial for treating and adopting out moderately to extremely fearful dogs. 

この手順は、中程度から極度に憶病な犬の治療や譲渡に有効であると、十分なリソースを持つシェルターでは認識されています。

 

結局、最終的にはリソースの問題になります。「やればできる」のに「やらない」理由はまさにそこにあります。具体的には、動物福祉に配慮しながら犬を3か月間収容することができるスペースと、行動療法を実施することができる十分な数のスタッフが必要です。岡山市はたまたまそういったリソースに恵まれました(政令市なので、収容される野犬の数が都道府県レベルよりも少ないという優位性もありますが)が、あえてリソースの整備を検討する価値はあるのではないでしょうか。