避妊去勢手術による行動修正効果 その2

避妊手術による行動修正効果

メス犬の避妊手術が行動にどのような影響を与えるかについても、オス犬と考え方は同じです。つまり「好ましくない」行動が卵巣から分泌される性ホルモンに依存しているか否かで決まります。

 

雌犬に特有の偽妊娠という状態がありますが、これにより巣作り行動を示したり、周囲への警戒心が高まってしまう犬がいます。このことが家族に対する攻撃行動を引き起こす、あるいは犬が終始ストレスを感じてしまうような場合には、避妊手術が有効となるでしょう。また、発情期に飼い主の命令に従わなくなる、発情周期に合わせて臆病になり留守番や散歩が苦手になる、あるいは飼い主の月経に合わせて攻撃が起きたりその他の問題行動がひどくなる場合には、避妊手術を行うことにより安定した生活を送れるようになると考えられます。

『最新 犬の問題行動 診療ガイドブック』荒田明香ほか(2011)、p50

 

犬は排卵後、妊娠の有無に関わらず黄体機能が一定期間持続します。つまりいったん排卵すると、たとえ妊娠していなくてもホルモンバランス上、妊娠している状態が一定期間続くのです。これが犬特有の「偽妊娠」です。避妊手術を実施すれば排卵は起きませんから、偽妊娠による攻撃行動を予防することができます。またその他、性ホルモンに起因する問題行動は避妊手術で軽減することができると考えられます。

 

なおメス犬の場合、避妊手術によって攻撃行動が悪化することがあるといわれていますが、その真偽も含めて詳しいメカニズムは不明です。

 

一方で、雌性ホルモンとは無関係に攻撃行動を示している雌に避妊手術を行うことで、攻撃行動が悪化したという例も報告されています。この理由は定かではありませんが、ホルモンバランスの変化が関係しているのかもしれませんし、一般的に避妊手術を受ける時期が社会的成熟に達する時期と近いために、「手術後に攻撃行動が悪化した」ととらえられてしまうのかもしれません。

『最新 犬の問題行動 診療ガイドブック』荒田明香ほか(2011)、p50

 

今後の研究が待たれるところです。