米国のTNR推進団体であるAlley Cat Alliesが、猫のHQHVSN(high-quality, high-volume spay/neuter:高品質かつ大量の避妊去勢手術)の効率的手順についてのポスターを作成しています。題して“Spay and Neuter Express Poster”は、11インチ×17インチのものが1枚2ドルで販売されていますし、Alley Cat Alliesのホームページ(https://www.alleycat.org/resources/spay-and-neuter-express-poster/)からダウンロードすることもできます。非常に簡潔にまとめられた良いポスターですので、その内容についてご紹介したいと思います。
このポスターは一応「獣医師向け」となっていますが、HQHVSNの現場で獣医師が携わる業務はさほど多くありません。逆に獣医師でなくても差し支えない業務については獣医師以外のスタッフが担当し、獣医師は医療行為に専念してもらうのが理想といえます。ですので、このポスターは獣医師向けであると同時に、HQHVSNの流れについてのスタッフ教育用としても非常に有効です。
HQHVSNの9つの「停車駅」
このポスターはHQHVSNの流れを列車の運行に例えて、9つの「停車駅」をいかに効率的にめぐるかを示しています。9つの「停車駅」とは、
1. Check-in/Registration(受付と登録)
2. Anesthesia(麻酔)
3. Prep(準備)
4. Waiting(待機)
5. Surgery(手術)
6. Eartipping(耳カット)
7. Post-Op/Vaccine(術後処置、ワクチン)
8. Grooming(ブラッシング)
9. Recovery/Discharge(回復、退院)
を指します。HQHVSNは文字通り、獣医療の最低基準を担保しながら大量の避妊去勢手術を行う方法です。固定型のスペイクリニックで実施されることもありますが、仮設の手術室に人員を一斉投入して集中的に手術を行うMASHというやり方もあります。特にMASHは野良猫の一斉TNRの際に威力を発揮します。常勤の熟練したスタッフが携わる固定型のスペイクリニックと異なり、MASHの場合は地元のボランティアのサポートを受けることが多いため、このポスターのような教育ツールが重要になります。この「路線図」のように作業全体を俯瞰することができれば、スタッフも作業の流れが理解しやすくなります。