HQHVSNの手順 ③麻酔

Alley Cat Alliesが作成している、猫のHQHVSN(high-quality, high-volume spay/neuter:高品質かつ大量の避妊去勢手術)の効率的手順についてのポスター“Spay and Neuter Express Poster”(https://www.alleycat.org/resources/spay-and-neuter-express-poster/)に従って、HQHVSNの手順を見ています。

 

2. Anesthesia(麻酔)

Using an “isolator,” nudge the cat to one end of the trap and inject the anesthesia cocktail into the cat’s muscle. when the cat is fully unconscious, remove the cat from the trap and attach the cat tag to a paw. Note the health and sex of the cat on the tag.

「アイソレーター」を使って、猫を捕獲器の片方に誘導し、猫の筋肉に麻酔カクテルを注入します。猫が完全に意識を失ったところで、捕獲器から猫を取り出し、前足に猫用の札を付けます。札に猫の健康状態と性別を記入します。

 

【のらぬこの解説】

アイソレーターとは 

捕獲器の中の猫を保定するために用いる、櫛のような器具です。これを捕獲器に差し込むことで、猫を隅で固定し、筋肉注射をすることができます。専用の市販品もありますが、園芸用のポールなどを用いて代用することができます。

 

麻酔カクテルとは 

麻酔導入薬を注射する際には、作用機序が異なる複数の鎮静薬を混合して用いるのが一般的です。米国で野良猫のTNRによく用いられるのはTKX(テラゾール+ケタミン+キシラジン)という処方です。

「テラゾール」はチレタミンとゾラゼパムの混合薬の商品名で、「ゾレチル」という商品もありますが、日本では未承認です。ケタミンは日本でも入手可能ですが、麻薬に指定されているため、処方には麻薬施用者免許が必要です。そのため米国で最もメジャーなTKXは日本では用いられていません。

米国ではTKXの他にも、MKB(メデトミジン+ケタミン+ブプレノルフィン)やTTD(テラゾール+メデトミジン+ブトルファノール)といった処方もよく用いられますが、日本では使用が難しい処方です。

日本でよく用いられているのは、MMB(メデトミジン+ミダゾラム+ブトルファノール)という処方です。この処方の利点は、日本で入手可能でかつ面倒な手続きも不要な薬剤のみを用いていることもありますが、メデトミジンの拮抗薬であるアチパメゾールを筋肉注射すれば、速やかに覚醒することもあげられます。

 

札を付ける場所 

前足であれば、大きめの札を付けても避妊去勢手術の邪魔にはならないと考えられます。