HQHVSNの手順 ④準備

Alley Cat Alliesが作成している、猫のHQHVSN(high-quality, high-volume spay/neuter:高品質かつ大量の避妊去勢手術)の効率的手順についてのポスター“Spay and Neuter Express Poster”(https://www.alleycat.org/resources/spay-and-neuter-express-poster/)に従って、HQHVSNの手順を見ています。

 

3. Prep(準備)

Administer Metacam or another painkiller, apply lubricant to the cat’s eyes to keep them moist throughout surgery, and attach female cats to spay boards. Shave the surgical site and sterilize with Betadine and alcohol.

メタカムなどの鎮痛剤を投与し、手術中も猫の目が潤うように潤滑剤を塗布し、メス猫をスペイボードに装着します。手術部位を剃毛し、ベタジンとアルコールで滅菌します。

 

【のらぬこの解説】

鎮痛剤の投与

当然のことながら手術は痛いですから、鎮痛剤の投与が必要です。適切な鎮痛を行わないと術後痛覚過敏状態となりやすいので注意が必要です。鎮痛剤は痛いときに投与するというイメージがあるかもしれませんが、手術開始前に鎮痛を始めるとより高い効果が期待できます。

 

眼の乾燥防止

麻酔中は眼が開きっぱなしになりますので、必要に応じて点眼薬や眼軟膏で乾燥を防ぎます。

 

スペイボード 

「スペイボード」は米国の猫のHQHVSNの際にしばしば用いられる秘密兵器です。プラスチック製のボートにメス猫をあらかじめ保定し、ボードごと移動させるようにすれば、その都度手術台に保定する手間が省けます。

 

手術部位の剃毛

私が学生の頃は、手術の際には手術部位を電動バリカンで刈り、その後カミソリで剃っていましたが、皮膚をカミソリで剃ると細かい傷ができて感染のリスクが高まるので避けるべきというのが今の常識となっています。「外科手術時の剃毛はカミソリではなく電動バリカンで行う」というのは、獣医師国家試験にも複数回(第65回、66回、73回)出題されています。

 

ベタジン

ベタジンとはムンディファーマ社が開発した、消毒用のポピドンヨード剤「ベタダイン」のことです。日本では「イソジン」(塩野義製薬)の方が通りがよいかもしれません。