ASPCA(米国動物虐待防止協会)の“S/N Building & Equipment Resource Guide”(以下「ガイド」)には、スペイクリニックを開設するにあたっての法的手続きについて述べられています。もちろん米国と日本とは法律が異なりますが、概ね似たような規制があります。一つずつ見ていくことにしましょう。
開設者の要件
Who can own a vet practice? Some states require a vet own the practice.
獣医診療所を所有できるのは誰ですか? 一部の州では、獣医師が診療所を所有する必要があります。
【のらぬこの解説】
米国の一部の州では、資格を持たない者が、資格者である獣医師の医療判断に影響を与えてはならないという観点で、動物病院を開設できるのは獣医師のみという規制を設けています。日本にはそういう規制はありませんが、獣医療法(平成四年法律第四十六号)第5条第1項で「開設者は、自ら獣医師であってその診療施設を管理する場合のほか、獣医師にその診療施設を管理させなければならない」と定められています。つまり開設者は獣医師でなくてもかまいませんが、その場合は獣医師の管理者を置く必要があります。
使用前検査
What inspections (from the state vet board) are needed prior to opening?
開業前に必要な検査 (州獣医委員会による) は?
【のらぬこの解説】
動物病院が施設要件を満たしているかどうか、事前に立入検査が実施されることがあります。米国では各州の「獣医委員会」(実態は州の獣医師会)が行いますが、日本では各都道府県の家畜保健衛生所(「家保」、昔は「家畜保健所」と呼ばれていました)が担当しています。日本では動物病院は「開設後10日以内に届け出る」こととされていますが(獣医療法第3条)、実際には計画段階から管轄の家保に相談し、施設要件を確認しながら準備を進め、届出後に使用前検査を終えてから開設という流れが一般的です。建物を最初から建設する際はもちろん、既存の建物をリフォームする場合でも、その建物が施設要件を満たすことができるかどうかを、あらかじめ確認してから取り掛かることをお勧めします。また家保とは連携を密にして、疑問点や心配事についてはその都度解決することをお勧めします。家保の担当者は基本的に獣医師ですから、相談はしやすいのではないかと思います。
※日本の法体系において「動物病院」という呼称はなく、正確には「飼育動物」の「診療施設」なのですが、ここでは便宜上「動物病院」と表記します。