スペイクリニックの法的規制 その4

日本でスペイクリニックを開設する際に満たすべき施設基準について、「獣医師法の一部を改正する法律及び獣医療法の運用について(平成4年9月1日4畜A第2259号 各都道府県知事あて農林水産省畜産局長通知)」から見ています。

 

調剤施設

調剤とは、処方箋に基づいて医薬品を揃え、患者に交付する業務。 医師・歯科医師・獣医師から発行された処方箋が正しいかを確認し、薬剤を計数・計量して患者に薬剤を交付するまでの一連の流れを総称した言葉である。 基本的には薬剤師の独占業務だが、医師・歯科医師・獣医師であれば、自ら処方した処方箋に限定して調剤を行うことができる。

製薬業界 用語辞典 | Answers(アンサーズ)https://answers.ten-navi.com/dictionary/cat01/2856/

 

野良猫や地域猫だけを扱うスペイクリニックであれば、退院後に薬を投与することはありませんから、調剤行為は基本的に発生しません。飼い猫や保護猫を扱うスペイクリニックであっても、手術の際に長時間作用型の鎮痛剤や抗生剤を投与することで調剤を省略することができます。もし退院の際に鎮痛剤や抗生剤などを数日分処方するのであれば、調剤を行う施設としての基準を満たすことが必要です。具体的には

 

・採光、照明、換気設備(窓、換気扇)

・医薬品を清潔に貯蔵する設備

・冷暗貯蔵のための設備(冷蔵庫等)

・調剤に必要な器具(調剤台、はかり、薬匙等)

 

が必要です。

 

手術を行う施設

スペイクリニックは当然ながら「手術を行う施設」ですから、その基準を満たす必要があります。具体的には、「その内壁(床面から概ね1.2メートルまでの高さとする。)及び床がコンクリート、モルタル又はタイル等の耐水性材料で覆われていること等が必要」です。ここで問題になるのは、MASHクリニックのような仮設手術室なのですが、文字通り解釈すれば壁や床を耐水性のシートで被えばよいと考えられますが、このあたりは管轄の家畜保健衛生所によく相談する必要があります。

 

放射線に関する構造設備

X線撮影装置等の放射線発生装置を設ける際にはさまざまな施設基準がありますが、通常スペイクリニックにはこのような施設は設けませんので、省略します。