スペイクリニックで実施される、犬猫の避妊去勢手術はいわゆる低侵襲手術ですので、手術そのものによる事故の可能性は極めて低いですが、全身麻酔を行いますので、麻酔事故の可能性は当然あります。スペイクリニックのスタッフは麻酔事故の際の心肺蘇生法(CPR)について、一応頭に入れておく必要があります。スペイクリニックにおける心肺蘇生法の手順の一例については、“Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition”(2013)に記載されています。
1. Evaluate the Patient(患者の評価)
Before initiating CPR make certain the animal is in cardiac arrest!! (cardiopulmonary depression of anesthesia can closely mimic arrest!).
心肺蘇生を開始する前に、動物が心停止状態であることを確認してください!! (麻酔の心肺抑制は心停止に酷似しています!).
【のらぬこの解説】
深い麻酔状態では、当然ですが心肺機能は低下します。そうではなく、心肺機能の異常な低下を探知するために、以下のような事項についてチェックします。
Feel for peripheral pulse or auscultate for heart sounds.
末梢脈を感じたり、心音を聴診します。
Check ocular signs (is there a palpebral response?) and jaw tone (is it lax?).
眼球徴候(眼瞼反射はあるか)、顎の緊張(弛緩しているか)を確認する。
Check mucous membrane color: (is it pale, blue, grey?).
粘膜の色をチェックする:(青白いか、青いか、灰色か)。
2. If animal is on inhalant anesthesia(吸入麻酔中の場合)
Turn off inhalant, disconnect ET from rebreathing circuit, flush circuit, reattach breathing circuit and confirm appropriate oxygen flow, check anesthesia equipment for technical problems.
吸入をオフにし、ETを再呼吸回路から取り外し、回路を洗浄し、呼吸回路を再接続し、適切な酸素流量を確認し、麻酔装置に技術的な問題がないか確認します。
【のらぬこの解説】
ETはendotracheal tube(気管チューブ)の略です。
3.麻酔拮抗薬の投与
Reverse any sedation or anesthetic drug that has been administered (give antisedan, yohimbine, flumazenil).
投与された鎮静薬または麻酔薬の拮抗薬を投与します(アンチセダン、ヨヒンビン、フルマゼニルを投与)。
【のらぬこの解説】
「アンチセダン」(アチパメゾール)はメデトミジンの、ヨヒンビンはキシラジンの、フルマゼニルはミダゾラムのそれぞれ拮抗薬です。