スペイクリニックの緊急対応(2) 気道確保と人工呼吸

スペイクリニックにおける心肺蘇生法の手順の一例について、“Shelter Medicine for Veterinarians and Staff, Second Edition”(2013)の記載から見ています。

 

4. If cardiac arrest is confirmed(心停止が確認された場合)

心停止が確認されたら、いわゆるABC アプローチを行います。すなわち、A:気道

(airway),B:呼吸(breathing),C:循環(circulation)です。

 

A. Airway(気道確保)

If animal is already intubated, assure correct ET placement via capnography if possible. If animal is not intubated, properly intubate with ET of the widest lumen appropriate for the animal.

動物にすでに挿管されている場合は、可能であればカプノグラフィで挿管が正しく行われているかを確認してください。挿管していない場合は、動物に適した最も広い内腔の気管チューブを用いて適切に挿管します。

 

【のらぬこの解説】

カプノグラフィとは呼気中の二酸化炭素の濃度を測定する装置です。正しい挿管の確認手段としては非常に優秀な機器ですが、スペイクリニックには通常備えられていません。特に猫の場合は挿管による事故のリスクとの兼ね合いで、短時間(30分未満)の麻酔であれば挿管しないことが許容されています※ので、日常的に挿管は行いません。しかし日常的に挿管を行わないにしても、気管チューブは緊急対応のために必須です。複数サイズの気管チューブと、喉頭鏡を常備しておく必要があります。

※The Association of Shelter Veterinarians’ 2016 Veterinary Medical Care Guidelines for Spay-Neuter Programs

 

B. Breathing(人工呼吸)

Administer 2 breaths of 100% oxygen. Then start 1 breath every 3-5 seconds using the rebreathing bag on the anesthesia machine with 100% oxygen or an AMBU bag. Be cautious with force of inflation (it is easy to cause a pneumothorax in small patients during CPR).

100%酸素を2回呼吸させます。次に、100%酸素入り麻酔器の再呼吸バッグまたはアンブ蘇生バッグを使用して、3〜5秒ごとに1呼吸を開始します。慎重に膨らませてください(小さな患者ではCPR中に気胸を起こしやすい)。

 

【のらぬこの解説】

「アンブ蘇生バッグ」はアンブ社が開発した蘇生バッグのことです。もちろん、麻酔器に付属している呼吸バッグを使ってもかまいません。