2022年に改訂された、ASV（シェルター獣医師会）の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ （アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」）では、動物福祉の新しい枠組み「Five Domains（5つの領域）」が示されました。ここではその「5つの領域」における「肯定的経験」と「否定的経験」について具体的に例示されています。(p2)
栄養（Nutrition）
＜肯定的経験の例＞Enough food and water（十分な食料と水）、Fresh clean water（新鮮できれいな水）、Balanced, variety of food（バランスの取れた、さまざまな食品）
＜否定的経験の例＞Restricted water（限られた飲水）、Restricted food（限られた食事）Poor quality（質が低い）、Monotonous（単調）
環境（Environment）
＜肯定的経験の例＞Comfortable（快適）、Temperate（温暖）、Routine（定例的）、Clean（清潔）、Interest/variety（興味を引く・多様な）
＜否定的経験の例＞Too cold or hot（寒すぎる、または暑すぎる）、Too dark or bright（暗すぎる、または明るすぎる）、Too loud or quiet（うるさい、または静かすぎる）、Unpredictable（予測不能）、Malodorous（悪臭）、Soiled（不潔）、Monotonous（単調）、Uncomfortable（不快）
健康（Health）
＜肯定的経験の例＞Physical health（身体的健康）、Good function（機能する）、Good body condition（体調良好）、Restful sleep（安眠）
＜否定的経験の例＞Body dysfunction or impairment（身体の機能不全または障害）、Disease（疾患）、Pain（痛み）、Poor fitness（体調不良）
機会（Opportunity）
＜肯定的経験の例＞Choice of environment（環境の選択）、Choice of interaction（交流の選択）、Behavioral variety（play, hunt, forage,engage, rest）（遊び、狩り、採餌、けんか、休息などの多様な行動）、Novelty（新しい経験）
＜否定的経験の例＞Barren cage（無機質な檻）、Confined space（閉じ込め）、Separation from people or species（人や同種からの分離）、Restraint（拘束）、Unavoidable sensory inputs（避けられない感覚的入力：騒音や日差しなど）
精神状態（Mental state）
＜肯定的経験の例＞Satisfied（満足）、Engaged（退屈しない）、Comfortable（快適）、Affectionate（愛情深い）、Playful（遊び心）、Confident（自信）、Calm（落ち着き）、Encouraged（元気）
＜否定的経験の例＞Fearful or anxious（恐怖または不安）、Frustrated（欲求不満）、Bored, lonely（退屈、寂しい）、Exhausted（へとへと）、Ill, painful（病気、痛い）Uncomfortable（不快）、Hungry, thirsty（空腹、のどが渇いた）
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022