アニマルシェルターの管理と記録(4) 方針と手順の策定

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、シェルターの運営体制について見ています。

 

1.3 Establishment of policies and protocols(方針と手順の策定)

 

Protocols must be developed and documented in sufficient detail to achieve and maintain the standards described in this document and should be reviewed and updated regularly. 

手順は本稿に記載された基準を達成し、維持するために十分詳細に作成し、文書化しなければならず、定期的に見直し、更新するべきである。 (p6)

 

All personnel must have access to up-to-date protocols. 

すべての職員は、最新の手順を入手できなければならない。(p6)

 

Shelter management must routinely monitor and ensure compliance with protocols. 

シェルター管理者は、日常的に手順を監視し、その遵守を確認しなければならない。(p6)

 

Shelters are obligated to comply with all local, state, and national regulations, which need to be reviewed regularly.

シェルターは、地域、州、国のすべての規制を遵守する義務があり、定期的に見直す必要がある。(p6)

 

【のらぬこの解説】

「ガイドライン」において方針(policies)とは「シェルターの使命(mission)と優先事項(priorities)に沿った運営を確保するための高次(high-level)の決定の枠組み」と表現されています。「シェルターの使命と優先事項」とは、極論すれば「シェルターに入る動物の数を減らし、シェルターから出ていく動物の数を増やし、シェルターに滞在する動物の数を極力少なく、願わくはゼロにする」ことであるといえます。その目的を達成するため、動物の受入れ、可能な処置、安楽殺、譲渡、輸送、地域の動物へのサービス(猫のTNRなど)などについて、シェルターの方針を定める必要があるのです。

 

手順(protocols)は「ガイドライン」において、「組織の方針に沿った一貫した日常業務を確保するための重要なツール」と表現されています。わかりやすく言えば、手順とは職員が日常業務を方針に沿った形で、確実に実施するための手引きといえます。手順はいわば現場の作業マニュアルですから、担当者はそれを手元に置き、随時確認できるようにしておく必要があります。また担当に関わらず、全ての手順を全職員が共有しておくことが望まれます。なぜならシェルターの各業務は関連しあっていますし、担当者が不在の場合に担当業務が回らなければ困るからです。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022