アニマルシェルターの管理と記録(5) 研修の1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※1 (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、シェルターの運営体制について見ています。

 

1.4 Training(研修)

 

Personnel training should incorporate all relevant aspects of working in the organization. 

職員研修は、組織で働くことに関連するすべての側面を取り入れるべきである。(p6)

 

Shelters must provide training for each shelter task, and personnel must demonstrate skills and knowledge before proficiency is assumed.

シェルターは、シェルターの各作業について研修を実施しなければならず、職員は習熟したと見なされる前にスキルと知識を実証しなければならない。(p6)

 

Documentation of training should be maintained and reviewed regularly as a part of professional development and performance reviews.

研修記録は、専門能力開発および業績評価の一環として保管され、定期的に見直されるべきである。(p6)

 

【のらぬこの解説】

人が動く組織においては、職員研修は最重要事項といってよいでしょう。当たり前ですが、アニマルシェルターは各職員の仕事によって成り立っています。特に各職員がシェルターの定めた作業手順を習熟しなければ、業務はすぐに滞ってしまいます。ですので、シェルターの方針や手順についての研修は必須といえます。またそれに限らず、職員が職業人としての資質を高めることは、直接業務のスキルに関連しないにしても、良い仕事をすることにつながります。「ガイドライン」では、「コミュニケーション技法(communication techniques)」「データ管理(data management)」「動物飼育(animal husbandry)」「職員のメンタルヘルス(staff well-being)」「社会の多様性、公平性、包摂性(diversity, equity, and inclusion)」※2といったテーマが例示されています。これが「組織で働くことに関連するすべての側面」という意味です。

シェルターは新規採用職員に対し、新人研修(Onboarding)を実施しなければなりません。新人が実地に入る前に、ペーパーテストや模擬演習などにより習熟度を確認する必要があります。また業務を経験させながら教育する、いわゆるOJT教育も有効です。

 

※1 Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022

 

※2 人材の多様性を認め、それぞれが活躍できる社会を目指す「D&I」に「E」を加えた、誰もが公平に活躍できる社会を目指すという考え方、だそうです。