アニマルシェルターの個体群管理(2) ケア能力の1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターのケア能力(capacity for care)について見ていきます。

 

2.2 Determining capacity for care(ケア能力の決定)

前述のとおり、アニマルシェルターのケア能力はシェルターの各種能力から総合的に導き出されます。ここではその各要素について述べられています。

 

収容能力(housing capacity)

Housing capacity calculations must be based on the ability to promote each animal’s positive welfare.

収容能力の計算は、各動物の積極的な福祉を促進する能力に基づいて行わなければならない。(p8)

 

【のらぬこの解説】

収容能力とは、動物を人道的に収容することができる飼育スペースの数です。ここにはシェルター内の檻やケージだけではなく、預かりボランティアの家(foster homes)や施設外の飼養施設(off-site housing)も含まれます。「施設外の飼養施設」とは何かというと、例えば譲渡促進を目的に都心部に設けられた、サテライトの「譲渡センター」などを指します。運用の仕方にもよりますが、施設内の収容スペース数を超える収容能力を持つシェルターも珍しくはありません。

 

職員の配置(time and skills of shelter personnel)

Trained personnel must be scheduled to meet daily animal care needs and efficiently and effectively accomplish each critical task.

研修を受けた職員が日々の動物ケアのニーズを満たし、各重要業務を効率的かつ効果的に遂行できるようにスケジュールを組まなければならない。(p8)

 

【のらぬこの解説】

要するに、動物福祉を担保したケアを実施できるだけの職員を必要数配置しろということです。一般的に、健康な動物の給餌や清掃にかかる時間は1日1頭当たり15分といわれていますが、当然ながら新人はベテランよりも時間がかかりますし、エンリッチメントやその他特別なケアを行うとさらに時間がかかります。獣医療に該当するケアは獣医師や愛玩動物看護師が実施しなければならないかもしれません。そこまで考えたうえで、職員の配置について考えていく必要があります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022