アニマルシェルターの個体群管理(3) ケア能力の2

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターのケア能力(capacity for care)について見ています。

 

2.2 Determining capacity for care(ケア能力の決定)※続き

 

特別なケアが必要な動物のケア

Services such as surgery, veterinary visits, or transport should be scheduled in anticipation of an animal’s eligibility for that service.

手術、獣医師の診察、移送などのサービスは、その必要性を見越して予定すべきである。(p8)

 

【のらぬこの解説】

けがや病気の動物など、特別のケアが必要な動物のケアには、さらなる時間やスキルが必要となる場合があります。そういったケアを外部のパートナーに委ねる場合、滞在期間の短縮の観点から、必要性を見越して効率的に予定しておく必要があります。

 

預かりボランティア(foster programs)

Foster programs must have sufficient personnel to provide support to caregivers and animals. 

預かりボランティア事業には、養育者と動物をサポートするために十分な人員を配置しなければならない。(p8)

 

Medical, surgical, and behavioral services for foster animals must be provided in a manner that promotes animal welfare and minimizes LOS.

預けた動物のための医療、手術、行動療法は、動物の福祉を促進し、LOSを最小化する方法で提供されなければならない。(p8)

 

【のらぬこの解説】

シェルターに動物を収容することそのものに感染症のリスクがあるため、米国においては特に幼齢の動物はシェルターに入れず、シェルターが契約しているボランティアに預けることがよく行われます。その際には、シェルターに収容された動物と同様の管理が必要です。またシェルターの動物と同様、ワクチン接種や避妊去勢手術などの獣医療も、できるだけ早い譲渡を目指して計画的に実施する必要があります。そのため、シェルター職員によるサポートは必須です。間違っても、ボランティアに丸投げはいけません。

ここで唐突にLOSという略語が出てきますが、LOSはLength of Stayの略で「滞在期間」のことです。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022