アニマルシェルターの個体群管理(4) ケア能力の3

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターのケア能力について見ています。

 

2.2 Determining capacity for care(ケア能力の決定)※続き

 

シェルターの資源

アニマルシェルターの資源(例えば資金や備品、資材など)も、ケア能力に影響を与えます。シェルターの資源が不足していると、当然のことながらケア能力は低下しますし、結果的に動物の福祉も低下します。シェルターに必要な資源の量や質はシェルター毎に異なりますから、「ガイドライン」ではあえて必須事項や推奨事項にはされていませんが、収容動物の福祉を担保できるだけの資源の確保は当然のことです。

 

シェルターの協力体制

Shelters should engage with one another to leverage resources and maximize each organization’s strengths. 

シェルターは互いに協力し合い、資源を活用し、各組織の強みを最大限に発揮するべきである。(p8)

 

【のらぬこの解説】

近隣のシェルターが協力体制を築き、資源などを融通し合うことは、収容動物の福祉にとってプラスになります。各シェルターがそれぞれの強みを生かし役割を分担することで、地域社会全体の動物保護能力を高めることができます。「ガイドライン」では、

 

・限られた獣医療しか提供できないシェルターが、フルサービスの獣医療を提供できるシェルターと提携する

・シェルターを持つ動物保護団体が、シェルターを持たない(預かりボランティア主体の)動物保護団体と連携する

 

といった例が挙げられています。

さらに動物保護団体同士の連携だけではなく、social workers(日本でいうところの社会福祉士や精神保健福祉士、介護支援専門員など)、housing advocates(支援が必要な人に低廉な住宅をあっせんする団体)、home care providers(在宅介護提供者)などの(人間の)福祉担当者と連携することにより、ペットの世話を支援したり、ペットが飼育放棄されることを防止したり、多頭飼育などの不適切飼育を早期に発見することもできます。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022