アニマルシェルターの個体群管理(5) ケア能力の範囲内の運営

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターのケア能力について見ています。

 

2.3 Operating within capacity for care(ケア能力の範囲内での運営)

An organization’s policies for admissions and outcomes should be based on their mandate, mission, and the needs of their community. 

受入れや結果に関する組織の方針は、その組織の使命、任務、地域社会のニーズに基づいて決定されるべきである。(p9)

 

【のらぬこの解説】

地域社会のアニマルシェルターに対する期待はきわめて高いものがあります。その反面、シェルターのケア能力には限界があります。シェルターがそのケア能力を超えた動物を収容することは、動物福祉の観点から許されません。ここでは、地域社会のニーズとシェルターのケア能力をすり合わせるための「戦略的計画」の重要性が述べられています。

 

シェルターの仕事を簡単に言えば、地域社会で「迷子」や「不要」とされた動物を受入れ、行き先を探して卒業させる(ここでは「結果outcome」と表現されています)ことです。ケア能力の範囲内でシェルターを運営するためには、「受入れ」と「結果」の適切な運用が不可欠です。そしてそれらは互いに関連しています。

 

「受入れ」に関する方針を簡単に言えば、どのような動物を受入れ、どのような動物を受入れないかということです。当然ながら地域社会はすべての動物を受け入れることを期待するでしょうが、あくまでもシェルターは動物本位で考えます。つまり「シェルターで受け入れた方がその動物のためになるか否か」で考えます。まずはそこのすり合わせが必要です。場合によっては、地域社会に一定の協力を求めることになるかもしれません。

 

「結果」とは動物がシェルターから「卒業」することで、一般的に「(飼い主への)返還」「譲渡(または里親)」「(他のシェルターへの)移送」「安楽殺」の4つを指します。結果に関する方針もまた、地域社会のニーズの影響を受けます。例えば動物の譲渡に対する潜在的なニーズや、預かりボランティアのなり手の数、安楽殺に対する考え方などは、シェルターの方針に直接関わってきます。例えばシェルターが収容動物を積極的に譲渡したいと考えたとしても、地域にそのニーズがなければ厳しいかもしれません。場合によっては、譲渡の潜在的ニーズが高い地域に動物を移送する必要があるかもしれません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022