アニマルシェルターの個体群管理(8) LOS(滞在期間)とは

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの個体群管理について見ています。その中で頻繁に登場する、LOS(Length of stay:滞在期間)の概念について軽く触れておきます。

 

2.3.3 Length of stay(滞在期間)

アニマルシェルターは日々動物を受入れ、何らかの「結果」を伴い卒業させます。その間の滞在期間を「ガイドライン」ではLOSと呼んでいます。例えばシェルターが迷子の犬を受入れ、当日中に飼い主に返還したとすれば、LOSは1日です。飼い主が名乗り出ずに、2週間後に新しい飼い主に譲渡すれば、LOSは14日です。なお、預かりボランティアやサテライトの譲渡センターなどにおける滞在期間についても、動物がシェルターの管理下にある限りLOSにカウントされます。

 

LOSと収容動物数との関係

シェルターに滞在している動物の平均数(Average Daily Population)は、1日当たりの平均受入れ数(Average Daily Admissions)と平均LOS(Average Length of Stay)を掛けて求められます。例えば、1日当たりの平均受け入れ数が10頭のシェルターが3か所あるとして、それぞれをA、B、Cとします。どのシェルターも、年間受入れ頭数(Admissions per year)は3,650頭です。しかしシェルターAの平均LOSを1週間、Bを2週間、Cを3週間とすると、シェルターに滞在している動物の平均数はAが70頭、Bが140頭、Cが210頭ということになります。

 

LOS短縮のメリット

上記のとおり、LOSが短いシェルターは滞在する動物数を少なくできます。そのことにより、いくつかのメリットが生まれます。まず、収容動物に対してより良い福祉を提供できますし、特別なケアが必要な動物に対するケア能力も向上します。またシェルターの受入れ能力の範囲内においてということにはなりますが、さらに多くの動物を受け入れることができますし、動物のケアに係る人的・物的資源を他のサービスに振り向けることもできます。

 

シェルターが受入れた動物のケアを実施する場合、常にLOSの短縮を念頭に置かなければなりません。ただしLOSを短縮する目的は、シェルターに滞在中の動物の数を減らすことで動物の福祉を向上させることですから、LOSを短縮させるために拙速な譲渡や安易な安楽殺を行うのは本末転倒といえます。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022