2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※ (アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの経路計画について見ていきます。
2.3.4 Pathway planning(経路計画)
Regardless of whether animals are on site or in foster care, decision-making and animal movement must optimize LOS.
動物がシェルターにいるか預かりボランティア宅にいるかにかかわらず、意思決定や動物の移動の際にはLOSを最適化しなければならない。(p10)
Medical or behavioral care that can reasonably occur outside of the shelter, either in foster care or after adoption, should be identified to minimize time in the shelter environment.
シェルター環境での時間を最小限にするために、預かりボランティアや譲渡後など、シェルター外で合理的に行える医療や行動のケアが特定されるべきである。(p10)
【のらぬこの解説】
前回も述べたとおり、アニマルシェルターに滞在する動物の数を減らし動物の福祉を向上させるには、LOS(滞在期間)を最適化し、不要な延長を避ける必要があります。LOSが延長する主な要因は「非効率化」です。「経路計画(Pathway planning)」とは、動物が必要とするサービスやケアを予測し、福祉を損ねることなく効率的に「結果」へと導くための手法といえます。そして収容動物の処遇を決定する際には、LOSの最適化ということを常に念頭に置く必要があります。
「ガイドライン」では、特にシェルターで提供する獣医療について精査することが推奨されています。一般的に獣医療はLOSを延長させます。シェルターでフルサービスの獣医療が提供できない場合、シェルターにおいてどこまでの治療が可能かということをあらかじめ明確にしておけば、外部のサービスにつなぐ意思決定を速やかに行うことができます。また非感染性の疾患やけが等の場合は譲渡を優先させ、後の治療を新しい飼い主に委ねることもできます。このあたりをあらかじめ方針として定めておくと、非常に便利です。
預かりボランティアが利用できるシェルターの場合、動物をボランティアに預けるか否かの判断は、LOSの最適化という観点から決定すべきです。例えば「猫かぜ」に罹患した子猫の場合、一般的にシェルターに置くよりも家庭に置いた方が治癒が早く、結果的にLOS短縮が期待できます。また避妊去勢手術を実施できないほど幼齢の子猫(6週齢未満)は、手術適齢期までボランティアに預けることにより、感染症のリスクを低下させることができます。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022