2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の取り扱いについて見ていきます。
3. Animal Handling(動物の取り扱い)
3.1 General(一般事項)
Handling must be humane and appropriate for the individual animal and situation.
取り扱いは人道的で、個々の動物や状況に適したものでなければならない。(p12)
To create a positive emotional response to human handling, shelter personnel should offer high-value treats or food when handling animals or performing procedures.
人間の取り扱いに対して肯定的な感情的反応を生み出すために、シェルター職員は、動物を扱ったり手順を実行したりするときに、うれしいごほうびや食べ物を提供するべきである。(p12)
When needed, medication should be used to minimize fear, anxiety, and stress and enhance safety during handling.
必要に応じて、恐怖、不安、ストレスを最小限に抑え、取り扱い中の安全性を高めるために薬物を使用するべきである。(p12)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターで受入れる動物は、まず身体検査を受けてから収容スペースに移されます。野良犬や野良猫の場合、野外で捕獲して移動用ケージに入れるところから取り扱いが始まります。動物の取り扱いについては、動物福祉の「5つの領域(Five Domains)」に沿うことが求められます。動物にとって収容のために拘束されること自体が「否定的経験」ですから、極力「否定的経験」の要素を排除した、人道的な取り扱いが求められます。人道的な取り扱いに必要な要素について、「ガイドライン」にはこう記載されています。
• on-going observation and assessment of behavior with adjustments to the animal’s handling plan as needed
行動を継続的に観察・評価し、必要に応じて動物の取り扱いに関する計画を変更する
• appropriate choice and management of environment
環境の適切な選択と管理
• sufficient number of trained personnel
訓練を受けた十分な数の職員
• suitable equipment readily available and in good working condition
適切な器具がすぐに利用可能で、良好な動作状態にある
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022