動物の取り扱い(2) 拘束

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の取り扱いについて見ています。

 

3.2 Restraint(拘束)

The minimal amount of physical restraint needed to accomplish necessary animal care without injury to people or animals must be used.

人や動物を傷つけることなく、必要な動物の世話を行うために必要な最小限の身体的拘束を使用しなければならない。(p12)

 

Forceful restraint methods must not be used, except in extraordinary circumstances. 

特別な場合を除き、強制的な拘束方法を使用してはならない。(p12)

 

Handling must minimize the risk of escape. 

取り扱いは、逸走のリスクを最小限に抑えなければならない。(p12)

 

【のらぬこの解説】

動物を取り扱う際に強制的な拘束方法が用いられる「特別な場合」とは、人や動物に危険が差し迫った状態(human or animal is in immediate danger)や、その他の手段(other low-stress handling options)、鎮静(sedation)、猶予(delays)がない場合を指します。例えば捕獲した野犬を移動用の檻に移すような場合です。犬が暴れるとスタッフはもちろん、犬もけがをする可能性がありますので、コントロールポールなどの拘束器具を用います。もちろん強制的な拘束は短時間にとどめるべきです。

 

「ガイドライン」では、強制的な拘束に代わるものとして「distraction with food or toys(食べ物やおもちゃで気をそらす」「positive reinforcement(正の強化:良いことをすればごほうびをあげるというやり方)」「use of towels(タオルの使用)」「blocking visual stimuli(視覚情報の遮断)」「sedation(鎮静)」「proper use of humane handling equipment(人道的な器具の使用)」が挙げられています。

拘束の必要性を少なくする方法として、「ガイドライン」では以下が挙げられています。

 

・静かな環境下で、時間をかけないよう必要な物品をあらかじめ用意し、その動物に慣れた人が扱う

・何度も扱う必要がある場合、日常のケアや口輪の使用に支障がないよう動物を訓練する

 

また、おびえた(frightened)動物、神経質な(fractious)動物、または野生の(feral)動物に対しては、鎮静剤や行動療法の使用が最も人道的である可能性があります。

 

動物の逸走は、他の動物や職員の負傷の原因になりかねませんし、再捕獲はその動物にも大きなストレスを与えます。動物をケージ等から出す際には不必要な刺激を与えないこと、そして動物が興奮していれば、落ち着くまで様子を見ることが重要です。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022