動物の取り扱い(5) 取り扱い器具 その3

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける動物の取り扱いについて見ています。

 

3.3 Handling equipment(取扱い器具) ※続き

 

正の強化の活用

Animals for whom handling equipment is necessary for long-term safe handling should receive positive reinforcement training to minimize fear, anxiety, and distress during its use.

長期の安全な取り扱いのために取り扱い器具が必要な動物は、その使用中の恐怖、不安、および苦痛を最小限に抑えるために正の強化トレーニングを受けるべきである。(p13)

 

【のらぬこの解説】

「正の強化」とは、例えば器具を用いた後にごほうびをあげるなどして、「器具の使用は不快だが、その後にいいことがある」と学習させることです。

 

犬のけんかの仲裁

Animal shelters must have written protocols and readily accessible equipment for breaking up dog fights to prevent human and animal injury. 

アニマルシェルターは、人と動物の怪我を防ぐために、犬の喧嘩を仲裁するための手順書を作成し、すぐに利用できる器具を用意しなければならない。(p13)

 

【のらぬこの解説】

シェルター内で犬のけんかが起こると、動物やスタッフに危険が及びます。速やかに犬を落ち着け引き離す必要があります。犬のけんかを仲裁するための器具として「ガイドライン」にはair horns(警笛)、whistles(笛)、citronella spray(ハーブの虫よけスプレー)、blankets(毛布)、break sticks(ブレイクスティック:噛みついた犬の口を開けるための器具)、 panels(防御盾)、water hoses(給水ホース)が例示されています。

 

3.4 Handling feral cats(野猫の扱い)

 

【のらぬこの解説】

「ガイドライン」において、feral cats(野猫)とは「人間と関わることなく野外で生活する、社会化されていない野生のイエネコ」と定義されています。日本でいうところの「ノネコ」に近い概念といえます。野猫の取り扱い、特に鎮静剤の注射や給餌、清掃、ケージ間の移動などの際には、捕獲器やcat denなどを用いた、特定の手順が必要です。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022