2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの施設について見ています。
4.3 Cohousing(集合飼育)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターで動物を収容する際には、個体ごとの囲いに入れるのが原則です。しかし同種の動物を囲いの中で複数飼育する、いわゆる集合飼育は個体間の社会的接触を促し、動物福祉の向上につながります。反面、集合飼育は個体間のけんかやいじめ、感染症の蔓延などのリスクもあります。集合飼育の可否は利点と欠点を比較し慎重に決定する必要がありますし、集合飼育を行う際には必要最小限の個体数にする必要があります。またシェルターの都合で多数の動物を大部屋に押し込むのは言語道断です。
4.3.1 Cohousing enclosure set-up(集合飼育施設の設定)
The size of a primary enclosure for cohousing must allow each animal to express a variety of normal behaviors and maintain distance from roommates when they choose to do so.
集合飼育のための外囲いの大きさは、それぞれの動物が様々な正常な行動を示し、同居人がそれを選択したときに距離を保つことができるものでなければならない。(p16)
A minimum of 18 ft2 (1.7 m2) of floor space per adult cat should be provided for cohousing.
集合飼育のためには、成猫1頭につき最低18平方フィート(1.7平方メートル)の床面積を確保すべきである。(p16)
Appropriate resources (e.g. food, water, bedding, litter boxes, and toys) must be provided to minimize competition or resource guarding and ensure access by all cohoused animals.
適切な資源(食物、水、寝具、トイレ、おもちゃなど)は、競争や資源を守ることを最小限に抑え、同居するすべての動物が利用できるように提供されなければならない。(p16)
For cohoused cats, a variety of elevated resting perches and hiding places must be provided to increase complexity and choice within the living space.
集合飼育の猫には、高さのある休憩所や隠れ家をいろいろと用意して、生活空間の複雑さと選択肢を増やさなければならない。(p16)
【のらぬこの解説】
集合飼育の際の外囲いの広さについての考え方は、個別飼育と同じく「普通に立って座って横になれること」「餌場とトイレの間に十分な距離を保つことができること」ですが、それに加えて「同居人からの適切な距離」を保持できることが必要です。そのため猫の場合、1頭当たりに必要な床面積は個別飼育よりも広く設定されています。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022