アニマルシェルターの施設(14) 床面と排水 その1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの施設について見ています。

 

4.5 Surfaces and drainage(床面と排水)

Primary enclosures and all animal areas must be able to be fully sanitized and withstand repeated cleanings.

外囲いとすべての動物エリアは、完全に消毒でき、繰り返しの清掃に耐えられるものでなければならない。(p18)

 

A sealed, impermeable surface, such as resinous epoxy or resinous urethane, is recommended for shelter flooring and should be considered for new facilities. 

エポキシ樹脂またはウレタン樹脂などの密閉された不浸透性材料は、シェルターの床材として推奨されており、新しい施設にも考慮すべきである。(p18)

 

Regardless of flooring type, points where walls meet floors should be sealed to prevent water intrusion and the accumulation of organic matter and pathogens.

床材の種類に関係なく、水の侵入や有機物や病原体の蓄積を防ぐために、壁と床が接する部分を密閉すべきである。(p18)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターの、直接動物に触れるスペースの床面は、洗浄や消毒に耐えられる不浸透性のものである必要があります。また水はけがよく、完全に乾燥できることも重要です。床の継ぎ目や破損部に水が残っていると、病原微生物の温床となりえます。特に犬や猫のパルボウイルスは湿潤環境下では数か月~数年残存しますし、皮膚糸状菌などの「カビ」も湿潤環境下で繁殖します。

 

そのためシェルターの床面は、エポキシ樹脂やウレタン樹脂で全面塗装することが望ましいといえます。エポキシ樹脂は床面塗装剤として広く用いられていますが、耐久性や耐熱性で他塗料に劣るといわれています。ウレタン樹脂はエポキシ樹脂よりもやや高価ですが、耐熱性、強度、耐久性に優れ、衝撃や薬品にも強いといわれています。

 

リノリウムやタイルは、感染症のリスクが低い場所の床材として用いられることがありますが、これらの素材は耐久性が低く、継ぎ目やグラウト材のために消毒が難しく、損傷または摩耗した部分に感染性病原体が潜んでいる可能性があります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022