2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの施設について見ています。
4.8 Lighting(照明)
Lighting should promote a safe working environment and effective observation of animals and the enclosure.
照明は、安全な作業環境と、動物や囲いの効果的な観察を促進するものであるべきである。(p19)
Facilities should be designed to offer as much natural light as possible.
施設はできるだけ自然光が入るように設計すべきである。(p19)
When natural lighting is not available and artificial light is used, it should approximate natural light in duration and intensity to support circadian rhythms.
自然光が利用できず、人工光を使用する際には、概日リズムをサポートするために持続時間と強度を自然光に近づけるべきである。(p19)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターの照明は自然光を基本とすべきですが、そうは言っていられないことも多いですので、そういった場合は人工灯を用いることになります。その際に注意すべきは「circadian rhythm(概日リズム)」です。概日リズムについては、厚生労働省e-ヘルスネット(https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-007.html)でこう説明されています。
睡眠・覚醒リズムは、体温などの自律神経系、内分泌ホルモン系、免疫・代謝系などと同様に、体内時計によって約1日のリズムに調節されており、このような約1日の周期をもつリズムのことを概日リズムと呼んでいます。
つまり自然光と同じように動物の体内時計に合わせて、昼は明るく、夜は暗くしましょうということです。これは必ずしも日の出とともに照明を点灯し、日没の時間に消灯しろということではありません。照明時間をその時期の日の長さに合わせ、夜間の暗い時間を一定時間確保することで動物の休息を促しますし、不必要に長い照明時間で猫の発情を促す(猫は日が長くなると発情する)ことを防ぐという効果もあります。
安全上の理由や法的規制などから夜間にも照明を点灯する必要がある場合は、赤や橙の照明が用いられます。赤や橙の光は体内時計に影響を与えず、また睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌を抑制しないからです。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022