2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの衛生管理について見ています。
5.3.2 Spot cleaning primary enclosures(外囲いのスポットクリーニング)
Spot cleaning should be conducted at least daily when an animal will remain in the same enclosure.
動物が同じ囲いの中に留まっている場合は、スポットクリーニングを少なくとも毎日実施するべきである。(p24)
【のらぬこの解説】
動物が同じ囲いの中に滞在していて汚れがひどくない場合、囲い内の完全な洗浄消毒は必要ありませんし、へたをすると環境の激変によって動物にストレスを与える可能性があります。動物を囲いの中に入れたまま、最低限の清掃を行うことを「スポットクリーニング(spot cleaning)」といいます。
スポットクリーニングは動物に与えるストレスが比較的少ない清掃方法です。動物を囲いに入れたままにするので、動物の取り扱いが最小限で済みますし、洗浄消毒による環境の激変(特に匂い)が避けられるからです。慣れ親しんだ匂いが除去されないことにより、通常であれば動物のストレスが少なくすることができます。スポットクリーニングは、人馴れしていない動物や、猫かぜのようにストレスによって悪化するような病気に罹患した動物には特に有効です。
スポットクリーニングは、動物を囲いに入れたまま行います(囲いの外でエンリッチメントを与えることもあります)。まず水や餌のボウルや、濡れたり汚れたりしたものを撤去します。次に糞や食べかすなどの有機物を除去します。必要に応じて、洗剤と使い捨てタオルを用いて汚れた部分を拭き取ります。洗剤を使った場所を二度拭きして洗剤を落とし、最後に水と餌を補給して終了です。
スポットクリーニングは動物にストレスを与えないことが最大の利点ですから、作業の際には極力動物に触らないことが求められます。そういう点においては、Multi-compartment enclosure(複数居室の囲い)が有利といえます。清掃の際に別の居室に動物を誘導すればよいからです。単一居室で動物が清掃のじゃまになっているような場合、人馴れしている動物であれば優しく押さえるのはアリです。人馴れしていない動物の場合、cat denなどの小型ケージに入れておく必要があるかもしれません。またケージのドアを優しく開閉するなど、騒音を防ぐ配慮も必要です。
スポットクリーニングはあくまでも簡易な清掃法ですから、汚れがあまりにもひどい場合はディープクリーニング(洗浄消毒を伴う本格的な清掃)が必要です。また動物を入れ替える際にも、ディープクリーニングが必要です。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022