2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの衛生管理について見ています。
5.4 Reducing pathogen spread(病原体の拡散を減らす)
【のらぬこの解説】
この項では「媒介物(Fomites)」を介した病原体の蔓延防止について述べられています。媒介物とは病原体を運ぶ可能性がある「物」を指し、手指、作業着、医療機器、フードボウル、トイレ、おもちゃ、掃除用具、取り扱い用具などが該当します。特に衛生作業や動物との交流など、動物に接触する際には注意が必要です。
5.4.1 Personal protective equipment(個人用保護具)
PPE should be selected based on specific pathogens and exposure risks within each population (see Public Health).
PPE(個人用保護具)は、各集団内の特定の病原体と曝露リスクに基づいて選択するべきである (公衆衛生の項を参照)。(p25)
Protective garments must be changed between handling each animal when there is a high risk for disease transmission.
病気が伝染するリスクが高い場合は、動物を扱うたびに防護服を交換しなければならない。(p25)
Personnel should wash hands after removing PPE.
職員は、PPE を取り外した後、手を洗うべきである。(p25)
【のらぬこの解説】
PPE(personal protective equipment)とは職員個人が身に着ける「保護具」で、具体的には手袋、防護服(ガウン、スクラブ)、シューズカバー、専用の靴などを指します。
PPEは感染リスクにより使い分ける必要があります。「ガイドライン」の付録にはこう記載されています。
・「健康な動物」や「非感染性疾患に罹患した動物」の場合、ケア前後の手袋または手洗いが必須、囲いが汚れている場合はシューズカバー等が推奨
・「軽度の感染症 (猫かぜなど) 」または「脆弱な動物」の場合、ケア前後の手袋および手洗いが必須、ガウンが推奨、囲いが汚れている場合はシューズカバー等が推奨
・「重度の感染症 (パルボウイルス感染症、汎白血球減少症など)」の場合、ケア前後の手袋および手洗い、ガウン、隔離室に入る際のシューズカバー等が必須
PPEを装着する目的は感染症の蔓延防止ですから、各エリアで適切なPPEを用い、適宜交換する必要があります。PPEは適切に使用しないと、逆に感染症の蔓延を招きますので、使用方法についての職員研修や、PPEの在庫確保、また使用済みPPEを廃棄する場所の確保など、適切な運用が必要です。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022