2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの衛生管理について見ています。
5.4.2 Hand hygiene(手指衛生)
Hand hygiene stations should be available in or near every area where contact with animals occurs.
手洗い場は、動物との接触が発生するすべての場所またはその近くに設置されるべきである。(p25)
Ideally, hand hygiene stations are sinks that allow washing with soap and water, and drying with single use towels.
手洗い場は、石鹸と水による手洗いが可能で、使い捨てタオルを備えたシンクが理想である。(p25)
Because hand sanitizers are ineffective against some of the most concerning pathogens in shelters (e.g. parvovirus, calicivirus, and ringworm), hand sanitizers should not be relied on as the sole means of hand hygiene.
手指消毒剤は、シェルターで最も懸念される病原体の一部(パルボウイルス、カリシウイルス、皮膚糸状菌など)には効果がないため、手指衛生の唯一の手段として手指消毒剤に頼るべきではない。(p25)
Hand sanitizer should only be used on hands that are visibly clean.
手指消毒剤は、手洗い後にのみ使用すべきである。(p25)
Sanitation protocols must address hand hygiene for shelter staff, volunteers, and visitors.
衛生手順には、シェルターのスタッフ、ボランティア、および訪問者の手指衛生を盛り込むべきである。(p25)
【のらぬこの解説】
手洗いは衛生の基本です。動物と接触する場所には、石鹸と手指消毒剤(60%以上のアルコールを含む)を備えた、流水式の手洗い設備が必要です。「ガイドライン」による基本的な手洗いの方法は、まず手を清潔な流水で濡らし、石鹸で20秒以上こすり洗いします。その後流水で石鹸を洗い流し、使い捨てタオルやジェットタオルなどで乾燥させ、手指消毒剤を手に塗布し、乾くまで(約20秒間)手をこすります。手が汚れたまま手指消毒剤を塗布しても、十分な効果は得られません。
またパルボウイルスや皮膚糸状菌など、アニマルシェルターでしばしば問題になる病原体にはアルコールがあまり効かないため、手指消毒剤を過信してはいけません。消毒剤で微生物を殺すというよりは、石鹸で微生物を洗い流すという意識で手洗いを行うとよいでしょう。
シェルターに入るすべての人が病原体を持ち込む可能性がありますが、特にシェルター職員は動物と接触する機会が多いので、手洗いを習慣化する必要があります。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022