2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターの衛生管理について見ています。
5.5 Other shelter areas(シェルターのその他の場所) ※続き
屋外の管理
Outdoor areas around the shelter must be kept clean, recognizing it is impossible to disinfect gravel, dirt, and grass surfaces.
シェルター周辺の屋外エリアは、砂利、土、草の表面を消毒することは不可能であることを認識して、清潔に保たなければならない。(p26)
Access to areas that cannot be sanitized should be restricted to adult animals who have been vaccinated, dewormed, and appear healthy, or animals for whom the benefits of such access outweigh the risks of disease exposure or transmission.
消毒できない区域へのアクセスは、ワクチン接種を受け、駆虫され、健康に見える成獣、またはそのようなアクセスの利点が病気への曝露や伝染のリスクを上回る動物に制限すべきである。(p26)
Standing water should not be allowed to accumulate in or around the shelter because mosquitos breed and many pathogens thrive in wet environments.
蚊が繁殖し、多くの病原菌は湿った環境で繁殖するため、シェルター内やその周辺に常時水が溜まらないようにするべきである。(p26)
【のらぬこの解説】
野外の運動場や遊び場の土砂や敷き物(玉砂利など)を定期的に清掃したり入れ替えたりして汚染を軽減することは可能ですが、一度に作業しようとするとその間その場所が使えなくなってしまいます。そのため全体をいくつかの区域に区切り、メンテナンス中の場所を使用禁止にするといった運用が考えられます。
5.6 Wildlife, rodent, and insect control(野生生物、ネズミ、昆虫の防除)
All food must be protected from wildlife, rodents, and insects.
すべてのフードは、野生生物、ネズミ、昆虫から保護しなければならない。(p26)
Rodent and insect control solutions must be safe, humane, and effective.
ネズミや昆虫の防除は、安全で、人道的で、効果的でなければならない。(p26)
【のらぬこの解説】
ネズミや昆虫は病原体を保有している可能性があり、動物が直接捕食したり、フードや環境を汚染したりすることにより蔓延します。アニマルシェルターにおいては適切な害虫等の防除が必要ですが、それは「安全で、人道的で、効果的」な方法である必要があります。つまり、いきなり殺虫剤や殺鼠剤を用いるのではなく、フードの適切な管理により害虫等が寄り付かなくする、また清掃の徹底により害虫等が住みにくくするといった環境対策を実現したうえで、必要最低限の薬剤を用いるというのが現在の害虫等防除の考え方です。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022