アニマルシェルターの獣医療(3)  獣医師との関係 その1

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.2 Veterinary oversight and medical recordkeeping(獣医師の監督と医療記録の保管)

 

獣医師との関係

A formal relationship with a veterinarian must be in place to ensure oversight of medical and surgical care in the shelter. 

シェルターでの医療および外科処置を確実に監督するために、獣医師との正式な関係を確立しなければならない。(p29)

 

Personnel providing medical care must have the skills and equipment to administer prescribed treatments safely and effectively.

医療を提供する職員は、処方された治療を安全かつ効果的に実施するための技術と設備を備えていなければならない。(p29)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターは何らかの形で「獣医師との正式な関係」を築く必要がありますが、それは必ずしも常勤の獣医師の雇用を意味しません。ただし獣医師が常勤していない場合であっても、動物の診察や処置については獣医師が実施しなければなりませんし、獣医師の指示によるその後のケアを実行できるスキルを持った職員も必要です。

 

医療手順の策定

All medical practices and protocols must be developed in consultation with the shelter’s veterinarian (see Management and Record Keeping). 

すべての医療行為と手順は、シェルターの獣医師と相談して作成しなければならない(管理と記録管理の項を参照)。

 

【のらぬこの解説】

シェルターの医療手順は獣医師と相談のうえ、獣医学的エビデンス(根拠)に基づき策定する必要があります。医療手順には診断や処置に関する事項だけではなく、動物の受入れや日常の衛生管理、動物の処遇に関する意思決定、コミュニケーションなども含まれます。

 

処置の実際

When a medical concern falls outside of standard protocols or does not respond to treatment as expected, a veterinarian must be consulted.

医学的な懸念が標準的な手順に対応していない場合、または期待どおりに治療に反応しない場合は、獣医師に相談しなければならない。(p29)

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022