アニマルシェルターの獣医療(4)  獣医師との関係 その2

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.2 Veterinary oversight and medical recordkeeping(獣医師の監督と医療記録の保管) ※続き

 

投薬

Medications and treatments must only be administered by prescription or in accordance with written protocols provided by a veterinarian. 

投薬および処置は、処方箋または獣医師が提供する書面による手順に従ってのみ投与しなければならない。(p29)

 

Medication should only be prescribed when there exists a reasonable presumptive diagnosis, the ability to administer as directed, and a plan to monitor the course of disease, so that success or failure can be determined. 

薬物は、合理的な推定診断、指示どおりに投与する能力、および成功または失敗を判断できるように疾患の経過を監視する計画が存在する場合にのみ処方されるべきである。(p29)

 

【のらぬこの解説】

例えばウイルスによる感染症が強く疑われるような症例に抗生物質を投与するなど、不必要な薬物の投与は副作用のおそれもありますし、何よりも薬剤耐性菌を生み出す原因にもなりかねません。

 

法的規制

When drugs are used or dispensed, it must be done in accordance with federal and state regulations. 

薬物を使用または調剤する場合は、連邦および州の規制に従わなければならない。(p29)

 

【のらぬこの解説】

日本において(米国も同様ですが)、獣医師が自己の処方せんにより自ら調剤することは認められていますが、薬剤師以外の者が「販売又は授与の目的」で調剤することは禁じられています。また向精神薬などのいわゆる規制薬物の取り扱いについては、法的規制に従わなければなりません。

 

医療記録とその提供

A medical history must be requested for all animals presented to the shelter and added to the medical record. 

シェルターに提出されたすべての動物の病歴を要求し、医療記録に追加しなければならない。(p30)

 

Shelters must document all medical care rendered to each animal in the medical record. 

シェルターは、各動物に施された医療処置について、医療記録に記録しなければならない。(p30)

 

A record of the animal’s medical care must be provided in hardcopy or electronic form when the animal leaves the shelter’s care.

動物がシェルターのケアから離れるときは、動物の医療記録を複写または電子データで提供しなければならない。(p30)

 

【のらぬこの解説】

医療記録は、動物の保護記録の最も大事な部分です。記録には年齢、性別、動物種や品種、避妊去勢手術の有無、身体検査の所見、ワクチン接種や駆虫の記録、スクリーニング検査の結果、処置記録(手術や投薬など)などが含まれ、そのデータは新しい飼い主に引き継がねばなりません。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022