アニマルシェルターの獣医療(5)  受入時検査

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.3 Medical assessment(医学的評価)

 

基本的な考え方

When intake to the shelter is necessary, each animal’s individual health status must be evaluated, documented, and monitored beginning at intake.

シェルターへの受け入れが必要な場合は、各動物の個々の健康状態を評価し、記録し、受け入れ時から監視しなければならない。(p30)

 

【のらぬこの解説】

シェルターメディスンでは、動物がアニマルシェルターに入ることそのものが感染症や行動異常などのリスク要因になると考えます。ですので、シェルターに動物の受入れ依頼があった時点で、詳細な情報を収集して極力シェルターに入れない方法を模索します。それでも受入れざるを得ない場合、シェルターに入れる際に動物の健康評価を実施し、収容中にわたって(ボランティアに預けている間を含む)健康状態を監視する必要があります。

 

大まかな健康評価

Each animal must receive at least a cursory health assessment by trained personnel at intake to check for signs of infectious disease or problems that require emergency medical care.

各動物は、感染症の兆候や緊急医療を必要とする問題がないかどうかを確認するために、訓練を受けた担当者による少なくとも大まかな健康評価を受けなければならない。(p30)

 

The intake assessment must include confirmation of the animal’s estimated age, sex, physical description, and the presence of any identification and microchips. 

受入時検査には、動物の推定年齢、性別、身体的特徴、および個体識別措置やマイクロチップの有無の確認が含まれていなければならない。(p30)

 

【のらぬこの解説】

シェルターに動物を受け入れる際にまず確認すべきなのは、すぐに処置や隔離が必要な健康上の懸念の有無と、飼い犬や飼い猫である可能性の有無です。詳細な健康診断の前に、この2点について取り急ぎ確認します。感染症制御の観点から、米国のアニマルシェルターでは通常このタイミングでコアワクチン(必須のワクチン)の接種と駆虫も行います。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022