2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。
6.3 Medical assessment(医学的評価) ※続き
総合的な身体検査
A comprehensive physical examination by a veterinarian or trained personnel should also be performed.
獣医師または訓練を受けた職員による総合的な身体検査も実施するべきである。(p30)
Ideally, this physical exam is performed within 24 hours of intake.
この身体検査は受入後24時間以内に実施されることが望ましい。(p30)
【のらぬこの解説】
総合的身体検査の目的は、受入時の健康状態を把握しておき、そこを基準点にすることによって収容中の動物の健康状態の変化の指標にすることです。受入時検査の際にFeLV(猫白血病ウイルス)や FIV(猫免疫不全ウイルス)などのスクリーニング検査が行われることもあります。検査所見は各個体の医療記録に記載しておきます。
感染症対策
Animals with signs of infectious disease at intake should be isolated until determined to be low-risk to the population.
受入れ時に感染症の徴候がみられる動物は、個体群に対するリスクが低いと判断されるまで隔離するべきである。(p30)
Heightened precautions to prevent disease transmission should be taken when handling more susceptible animals, such as juveniles, older animals, and those with underlying conditions.
幼齢動物、老齢動物、基礎疾患のある動物など、より感染しやすい動物を取り扱う際には、病気の伝染を防ぐための予防措置を強化するべきである。(p30)
【のらぬこの解説】
感染症疑いの動物を隔離することにより、シェルター内における感染症の蔓延を防ぐことができます。ただし見た目健康な動物をやみくもに隔離することは推奨されません。不必要な隔離は滞在期間(LOS)を延長し、シェルターの収容能力を低下させるからです。
感染しやすい動物の予防措置として、「ガイドライン」ではボランティアに預ける(placement in foster care)、接触する人の制限(limiting the number of people in contact)、個人用保護具(PPE)の使用(using personal protective equipment), 最も脆弱な個体に対するケアの提供(providing care for the most vulnerable first)が挙げられています。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022