アニマルシェルターの獣医療(7)  必須の健康および予防ケア

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.4 Essential wellness and preventive care(必須の健康および予防ケア)

For example, grooming and bathing are essential components of animal care and must be provided when necessary for animal health or comfort.

たとえば、グルーミングと入浴は動物のケアに不可欠な要素であり、動物の健康や快適さのために必要に応じて提供しなければならない。

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターにおいて収容中の動物の身体的・精神的健康をサポートするため、見た目健康な動物であっても予防医学は必要ですし、疾病を早期発見することも重要です。最低限必要なケアとして「ガイドライン」ではワクチン接種、駆虫、栄養管理、その他動物種に対応したケア(グルーミングや入浴など)が挙げられています。

 

定期的なグルーミングや必要に応じた入浴は、被毛や皮膚の健康を保つだけではなく、皮膚病や削痩を早期発見する機会になりますし、見た目が良くなることにより譲渡を促進し、また作業そのものが職員との交流を促します。これらについて「ガイドライン」には詳細に記述されていないので、ここで補足しておきます。

 

グルーミング

ここでいう「グルーミング」には、ブラッシングや爪切りなどが含まれます。ブラッシングについては犬も猫も必要で、特に長毛種では重要です。また猫については爪切りも必要です。

 

日常の飼養管理の一環としてのグルーミングだけではなく、シェルターには医療処置としてグルーミングが必要な犬や猫が収容されることがあり、「メディカルグルーミング」が行われることがあります。例えば顔の被毛が伸びすぎて採餌もままならないような個体や、被毛が絡まって固まってしまい運動に支障をきたすような個体が時折見られます。また犬の場合、適切に運動していれば爪の伸びが問題になることはありませんが、ネグレクトなどにより爪が伸びた犬が収容されれば、爪切りが必要な場合もあります。個体によってはグルーミングの際に鎮静が必要な場合があります。またグルーミングに用いるブラシは皮膚感染症予防の観点から個体ごとに消毒する必要があるため、消毒が容易なステンレス製が望ましいといえます。

 

入浴

犬については、定期的に入浴させる必要があります。犬は糞便中にパルボウイルスなどの病原体を含んでいる可能性があり、それらのウイルスは被毛に付いて長期的に生存しますので、定期的に洗い流すことは感染防止に有効です。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022