2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。
6.4.1 Vaccination(予防接種)
Shelters must have a written vaccination protocol developed under the supervision of the shelter’s veterinarian (see Management and Record Keeping).
シェルターは、シェルターの獣医師の監督の下で作成された、文書化された予防接種の手順を備えていなければならない(管理および記録保持の項を参照)。(p30)
【のらぬこの解説】
アニマルシェルターは感染症のリスクが高いため、コアワクチン(必須のワクチン)の接種は基本です。また接種についての考え方は主にペットを扱う一般の動物病院とは異なります。具体的には、4週齢以上の幼齢の犬猫にも接種しますし、コアワクチンと非コアワクチン(任意のワクチン)の分類も異なります。
ワクチンの取り扱い
Shelters must properly handle and store vaccines according to manufacturer guidelines.
シェルターは、メーカーの指示に従い、ワクチンを適切に取り扱い、保管しなければならない。(p31)
The location for specific vaccine injections should follow administration site guidelines.
特定のワクチン注射の場所は、投与部位の指示に従うべきである。(p31)
「適切な取り扱い」の例として「ガイドライン」には「メーカー指示による冷蔵保管」「凍結の防止」「使用1時間以内の溶解」が挙げられています。またワクチン接種の際には「メーカー指示の用量と投与経路の順守」「滅菌済みの注射器や新品の針の使用」「動物の優しい取り扱い」といった「適切な技術」が必要としています。
医療記録やワクチン接種証明書の記載に必要となるため、接種したワクチンのシリアル番号を記録しておく必要があります。通常ワクチン容器にはシリアル番号が記載されたシールが貼られていて、剥がしてそのまま書類に貼ることができるようになっています。
有害反応への対応
Shelters must have protocols for recognizing, managing, and reporting adverse vaccine reactions, and required treatments must be accessible.
シェルターには、ワクチンの有害反応を認識、管理、報告するための手順が必要であり、必要な処置を実施することができる体制を備えていなければならない。(p31)
【のらぬこの解説】
前述のとおり、シェルターにおけるワクチン接種にはリスクが伴いますから、副反応に対応するための手順と体制が必要です。なお日本の場合、動物用医薬品の使用に起因すると疑われる有害反応については、獣医師等が農林水産大臣に報告しなければならないと「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)」第68条の10で規定されています。
※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022