アニマルシェルターの獣医療(15)  新生仔の扱い

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.4.7 Pregnant, nursing, and neonatal animals(妊娠中、授乳中、および新生仔の動物)

 

新生仔のケア

Shelters should have a protocol for the care of pregnant, nursing, and neonatal animals. 

シェルターには、妊娠中、授乳中、および新生仔の動物のケアのための手順が備えられるべきである。(p33)

 

【のらぬこの解説】

授乳中の動物をアニマルシェルターに収容する場合、特別な配慮が必要です。収容場所は他の動物と分ける必要がありますし、毛布も用意する必要があります。また母乳が出ているか否か、子どもが母乳を飲めているか、そして子どもの体重変化など、チェックしなければならない項目は通常の動物よりもたくさんあります。

 

妊娠中の動物がシェルターに入ってきた場合、どうするかは悩ましい問題です。新生仔のケアを考えるとシェルター内での出産は避けるべきですので、預かりボランティア宅で出産させるか、堕胎手術が望ましいといえます。母子にとって快適な環境が提供できるのであればという条件付きではありますが、シェルターで出産させるという選択肢もあります。いずれもメリットとデメリットがありますので、どれを選択するかはシェルターの方針として定めておく必要があります。

 

新生仔のケアの実際

Shelters housing pregnant, nursing, or neonatal animals must ensure that additional disease prevention, nutrition, and stress reduction measures are taken, to protect these vulnerable populations. 

妊娠中、授乳中、または新生仔の動物を収容するシェルターは、これらの脆弱な集団を保護するために、追加の病気の予防、栄養、およびストレス軽減対策が講じられていることを確認しなければならない。(p33)

 

【のらぬこの解説】

しつこいようですが、妊娠中や授乳中の親子の動物をシェルターに収容することは推奨されません。そういった動物は、預かりボランティアに託すことが最善の選択です。感染症のリスクが低く抑えられますし、ケアの目も行き届きやすいからです。やむを得ずシェルターに収容せざるを得ない場合、特に注意深い対応が必要です。どちらにしても、妊娠中の動物や新生仔は体調が急変しやすく、緊急処置が必要になることがありますから、緊急時の対応について定めておく必要があります。

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022