アニマルシェルターの獣医療(16)  健康上の懸念への対応

2022年に改訂された、ASV(シェルター獣医師会)の“Guidelines for Standards of Care in Animal Shelters Second Edition”※(アニマルシェルターにおけるケアの基準に関するガイドライン第2版、以下「ガイドライン」)から、アニマルシェルターにおける獣医療について見ています。

 

6.5 Responding to health concerns(健康上の懸念への対応)

 

一般的な考え方

Any animal observed to be experiencing pain, suffering, or distress; rapidly deteriorating health; life-threatening problems; or suspected zoonotic medical conditions must be promptly assessed and managed. 

痛み、苦しみ、または苦痛を感じていることが観察された動物;病状が急速に悪化;致死的問題;または人獣共通感染症の疑いのある病状は、迅速に評価および管理しなければならない。(p33)

 

【のらぬこの解説】

アニマルシェルターは病気やけがの動物を受け入れることもありますし、受入前に感染した感染症が収容中に発症することもあります。収容中の動物の医学的懸念に対する診断や処置についての手順を定めることは重要事項です。さらに重要なのは、職員がその懸念にいち早く気づき獣医師に報告するための手順です。

 

感染症への対応

Infectious disease protocols must include measures both to minimize transmission and to ensure appropriate care of the infected animals. 

感染症への対処手順には、伝染を最小限に抑え、感染した動物の適切なケアを確保するための対策が含まれていなければならない。(p33)

 

【のらぬこの解説】

感染症の対策手順は施設の構造やリソースが異なるため、各シェルターで独自に定める必要があります。犬パルボウイルス感染症や皮膚糸状菌症など、シェルターで一般的に発生する感染症については、疾病ごとに手順を定めておくことが望ましいといえます。

 

獣医師の関与

The shelter veterinarian should be consulted on all policies and protocols related to the maintenance of medical and behavioral animal health (see Management and Record Keeping).

シェルター獣医師は、医学的および行動上の動物の健康の維持に関連するすべての方針と手順について相談に応じるべきである(管理と記録管理の項を参照)。(p33)

 

※ Journal of Shelter Medicine and Community Animal Health 2022 -http://dx.doi.org/10.56771/ASVguidelines.2022